リーガルエッセイ
公開 2020.09.23 更新 2021.07.18

健康器具販売会社の元会長ら詐欺罪で逮捕

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、刑事分野の責任者として指導にあたる。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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配当の見込みがないのに顧客を勧誘して出資金をだまし取ったとして、健康器具販売会社の元会長らが詐欺罪の被疑事実で逮捕されました。
捜査が始まったばかりで事実関係も明らかになっていませんので、本件については引き続き注目していきたいと思いますが、この事件を報じるニュースで「販売預託商法」というキーワードが出てきますので、今回は、これをとりあげてみます。

「高い配当を受けられます」「元本は保証します」販売預託商法の悪用

販売預託商法というのは、商品を販売するのと同時に、顧客が買ったその商品を業者が預かり、これを運用したり第三者に貸し出したりして、そこで得られる利益を顧客に還元するという仕組みをいいます。

販売預託商法といってもいろいろですので、ひとくくりにはできないと思います。
以下、「悪質な業者が行っている販売預託商法」という前提でお話しします。
顧客は、商品を買うにあたって、業者から「高い配当を受けられます」「元本は保証します」と誘われていて、そのような言葉につられ、その説明を信じて商品を買います。
そして、実際に、最初のころは、当初の説明どおり配当金が支払われます。
ですから、顧客は、すっかり業者のことを信じてしまいます。
でも、実際は、運用の実績などなかったり、第三者に貸し付ける仕組みなどなかったり、ひどいときには、そもそも商品自体がなかったりします。
悪質な業者は、Aという顧客に商品を売ったときにAが支払う商品の代金を、別の顧客BやCへの配当金に回すなどしており、つまり、利益を生む仕組み自体ができていません。
だから、結局、会社は自転車操業となってしまい、遅かれ早かれ経営は破たんします。
これまで、この販売預託商法がとられていたとみられる業者により巨額の損害を被ったという事例が発生し、都度、大きく報じられてきましたが、いまだこの販売預託商法による被害はなくなっていないようです。

このような販売預託商法により経営破たんに瀕し、本当は元本を返すこともできないし、配当することもできないにも関わらず、高配当をうたうなどして商品の販売を勧誘して商品を買わせれば、詐欺罪が成立します。

少し違う話になりますが、金融商品取引法という法律では、他者から金銭などの出資、拠出を集め、そのお金を用いて何らかの事業、投資を行って、その事業から生じる収益などを出資者に分配するような仕組みについては、登録を受けることが義務付けられています。
この仕組みって、まさに、この販売預託商法と同じなのではないかなと思いませんか?
販売預託商法は、金融商品取引法が、集団投資スキームについて登録を義務付けていることの脱法なのではないかという見方もできるように思います。

消費者庁「販売預託商法」原則禁止へ

販売預託商法を悪用した被害続発に鑑み、消費者庁は、販売預託商法の原則禁止を掲げた報告書をとりまとめたとのこと。
報道によれば、この報告書では、販売預託商法について「反社会的」であると指摘しているとのことです。
これまで販売預託商法を悪用した詐欺の被害に遭われたかたの中には、ご高齢のかたも多くいらっしゃるとのこと。
これまで大事に積み立ててきたお金を元手にしてお金を増やすことができたら、今後自身にかかるさまざまなお金に関し、家族に負担をかけずに済むという思いから勧誘に応じたかたもいるかもしれません。
販売預託商法を悪用した詐欺については、ここ最近に発生したものでないことを考えると、これを防ぐための法整備が遅きに失するとの批判もあると思います。
今後の法改正の動きに注目していきます。

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