リーガルエッセイ
公開 2020.07.30 更新 2021.07.18

コロナ差別

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、刑事分野の責任者として指導にあたる。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
<メディア関係者の方>取材等に関するお問い合わせはこちら

今日、テレビで「コロナ差別」という言葉が取り上げられているのを見ました。
コロナウイルスに感染した人や、感染リスクが一般的に高いと見られている環境に住居や職場があったりする人に対し、心ない言動がとられることがあるとのこと。
「コロナ差別」と聞くと、「道徳的にそれはどうかなあ」と感じるような言動をそう呼ぶのかと想像していたところ、具体的なエピソードを聞くと、それ自体、犯罪が成立するといえるものもあるようです。

脅迫、器物損壊、名誉棄損…犯罪が成立する可能性も

数か月前、コロナ感染がまさに拡大しているといったころでしたが、ある大学のゼミやサークルの懇親会で感染者集団が発生したとして、大学に抗議の電話やメールが殺到したと報じられたことがありました。
そして、その中には、「殺しに行くぞ」などというそれ自体脅迫罪を構成するような内容のものもあったとのことです。

先日は、コロナウイルスの感染再拡大が報じられる中、長野県のある銀行にコンクリート片が投げ込まれ、窓ガラスが割れたという被害があったとのこと。
この銀行の職員のコロナ感染が報じられた直後のことだったため、その報道を受けての嫌がらせではないかとみられ、捜査されているようです。
このように、コンクリート片を投げつけて窓ガラスを割ったとすれば、それは器物損壊罪に該当します。

コロナ感染が初めて確認されたある市で、感染者を名指しして「この顔にピンと来たらコロナ注意」などと記載されたビラが置かれていたとの報道もありましたね。
ビラには、顔写真(実際に感染されたかたのものか否かは判明していないとのこと)が印刷されていたとのこと。
このようなビラを置くことについても、名誉棄損罪にあたる可能性があります。

県外移動による感染拡大が不安視されている中、県外ナンバーの車のナンバープレートが駐車中に折り曲げられるといった被害が報じられたこともありました。
これももちろん、器物損壊罪にあたります。

感染対策や感染防止のためにどのような行動をとるべきかということについての考え方には、人によって差がありますよね。
特に、コロナウイルスに関しては、まだまだ分からないことが多く、正体の見えない怖さゆえに、私自身もかなり神経質になっているなと自覚しています。
近くに、マスクをしないで大声で話している人がいると、そっとその場を離れて距離を置きたくもなってしまいます。
だから、だれかがコロナ感染した、という話を聞けば、それに対し、過敏に反応してしまう気持ち自体はとてもよくわかる気がします。
でも、その気持ちがあまりに高じてしまうと、もし自分がコロナになったら、とてもそれを周囲に言えないという空気になってしまいそうですよね。
コロナになったことが周りに明らかになったら、袋叩きにあってしまう、どんな被害に遭うかもわからないと思うと、おそろしくて体調が悪いこと自体隠してしまったり、検査を受け控えてしまったりという事態も懸念されます。
そうなると、コロナ感染への過敏な反応が、さらなる感染拡大を招いてしまうともいえそうです。

コロナ感染への不安が、誹謗中傷や刑事事件に発展することがあってはならない

コロナ感染への不安が高じ、それが刑事事件に発展することがあってはならないことは当然として、だれもが不安を抱えながら生活している今、不安から傷つけあうのでなく、この未曽有の事態をともに乗り越えるために力を合わせることができればいいな、と、きれいごとではありますが、でも、心からそのように思います。

コロナに感染し、または、感染の事実などないのに、他人から誹謗中傷されたり、物を壊されたり脅されたりといった被害に遭いご不安な思いをされているかたは、弁護士にご相談ください。弁護士が、そのご不安を解消し、安心して毎日を過ごせるように何ができるか提案致します。

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