窃盗を含む累犯前科のある中、減刑へ。
ご相談までの経緯・背景
窃盗などの前科のあるAさんは、デパートの地下街で、買い物をしていた男性の買い物かごの中にあった財布に目を止めました。経済的に余裕のなかったAさんは、男性に気づかれないようにその財布を手に取り、足早に店を出ようとしました。
しかし、Aさんが窃盗するところを見ていた保安員に声を掛けられ、窃盗の容疑で現行犯逮捕されました。
解決までの流れ
Aさんには、窃盗の他にも数々の前科がありました。そこで、Aさんに情状酌量の余地があるかが争点になりました。
◆ 被告人の犯行の態様・背景
被害金額や犯行回数、犯行動機は、窃盗罪の量刑判断に大きな影響を与えます。本件窃盗の被害金額は、60万円以上と相当高額であり、被害結果は軽視できないといえます。
◆ 反省し、謝罪の意思を示していること
被告人が自らの行為について深く反省していることは、量刑判断にあたって考慮される事情となります。被害者に対する謝罪文を書き、自身の反省を伝えようとすることが大切です。
◆ 被告人の更生が期待できること
すでに前科がある場合には、被告人が再犯に及ぶ可能性が高いと判断されるおそれがあります。また、再犯の防止には、被告人をサポートしていく環境が整っていることが重要になるので、家族による監護が約束されていることは、重要な考慮要素になります。
結果・解決ポイント
事実関係に争いはなかったものの、Aさんには前科があり、情状酌量の余地があるかが争点となりました。
弁護士は、情状が認められ減刑されるよう、弁護活動の中で以下の事情を主張しました。
① 犯行が計画的なものではないこと
Aさんは、自己の経済状況を惨めに感じ、また、家族に対して苦労をかけていることを不憫に思い、突発的に金銭がほしいと思ったことから本件犯行に及んでしまいました。また、Aさんは被害者の財布の中身を把握していなかったため、被害金額が高額になることは想定していませんでした。
② 被害者に対して一貫して謝罪の意思を持っていること
Aさんは、逮捕直後から事実関係を認めており、被害者に対する謝罪文を作成しました。最終的に被害者と示談することはできなかったものの、被害者に対する謝罪をずっと望んでおり、検察官を通じて、被害者に謝罪の意思や示談をしたい旨を伝えていました。
③ 自身の更生に向けて意欲的であること
Aさんは、本件犯行のきっかけである自身の経済的な困窮を解消するため、弁護士や知人を介して、定職に就いて安定的な収入を得られるよう、勤務先を紹介してくれるように協力を求めました。
その結果、Aさんの知人の会社で、Aさんを雇用することを約束してもらうことができたので、弁護士は、この点でもAさんの今後の更生が期待できることを主張しました。
④ 家族による監護の環境が整っていること
Aさんの妻は、保釈金の準備のために保釈保証協会に問い合わせをするなど、Aさんのために終始行動をしており、Aさんの身元引受人として、再犯のないよう監護していくことを誓いました。また、Aさんの母も、Aさんの生活や就業に関してAさんの妻とともに監督・指導を徹底することを誓いました。
このように、周囲の協力を得て、Aさんが今後、更生することが大いに期待できることを主張しました。
弁護士の懸命な弁護活動の結果、裁判所は、Aさんの刑事責任は軽視できないとしながらも、以上の事情を考慮し、求刑懲役2年だったところ、懲役1年6月に酌量減刑されました。
前科がある場合でも、減刑される可能性は十分にあります。お困りの際はぜひ一度ご相談にいらしてください。
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