コラム
公開 2024.05.11

単体218_新規パワハラの3要素6類型とは?弁護士がわかりやすく解説

パワハラがどのようなものであるか検討する際、「3要素6類型」が参考となります。

このパワハラの3要素6類型とはどのような内容なのでしょうか?
また、パワハラの被害に遭ってしまったら、どのように対処すればよいのでしょうか?

今回は、パワハラの3要素6類型や被害に遭った場合の対処法などについて、弁護士がくわしく解説します。

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パワハラの3要素とは

パワハラについては、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(通称「パワハラ防止法」)」で、次のように定義されています。

  • 「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害される」もの(パワハラ防止法30条の2)

この定義は、次の3つの要素に分解できます。

  1. 優越的な関係を背景としていること
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えていること
  3. 就業環境が害されること

はじめに、このパワハラ3要素についてそれぞれの概要を解説します。

優越的な関係を背景としていること

パワハラ3要素の1つ目は、「優越的な関係を背景としていること」です。
この典型的なパターンは、上司から部下など、職制が上の者から下の者に対しての言動です。

ただし、次の場合であってもこれに該当する可能性があります。

  • 同僚または部下による言動で、その言動を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、その者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるもの
  • 同僚または部下からの集団による行為で、これに抵抗や拒絶をすることが困難であるもの

このように、同僚や部下からの言動であってもパワハラに該当する可能性があることを知っておきましょう。

業務上必要かつ相当な範囲を超えていること

パワハラ3要素の2つ目は、「業務上必要かつ相当な範囲を超えていること」です。
これは、次の言動などを指します。

  • 業務上明らかに必要性のない言動
  • 業務の目的を大きく逸脱した言動
  • 業務を遂行するための手段として不適当な言動
  • 行為の回数、行為者の数など、その態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える言動

業務上必要かつ相当な範囲を超えているか否かは、次の要素などから総合的に判断されます。

  • その言動の目的
  • その言動を受けた労働者の問題行動の有無や内容、程度を含むその言動が行われた経緯や状況
  • 業種・業態
  • 業務の内容・性質
  • その言動の態様・頻度・継続性
  • 労働者の属性(経験年数や年齢、障害がある、外国人であるなど)
  • 労働者の心身の状況(精神的又は身体的な状況や疾患の有無など)
  • 行為者の関係性

なお、その言動を受けた労働者に問題行動があったとしても、このことだけをもってパワハラが否定されるわけではありません。
たとえ問題行動があっても、人格を否定するような言動など、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動がなされれば、パワハラに該当する可能性があります。

就業環境が害されること

パワハラ3要素の3つ目は、「就業環境が害される」ことです。

「就業環境が害される」とは、その言動によって労働者が身体的または精神的に苦痛を与えられ、就業環境が不快なものとなったために能力の発揮に重大な悪影響が生じるなど、労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることを指します。

これに該当するかどうかは個々の受け手によって判断されるのではなく、「平均的な労働者の感じ方(同様の状況でその言動を受けた場合に、社会一般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうか)」を基準として判断されます。

パワハラの6類型とは

パワハラには、6つの類型があるとされています。
ここでは、6類型それぞれの概要や例を紹介します。

  1. 身体的な攻撃
  2. 精神的な攻撃
  3. 人間関係からの切り離し
  4. 過大な要求
  5. 過小な要求
  6. 個の侵害

なお、実際には複数の類型に同時に該当するパワハラもあるでしょう。
どの類型に該当するかが重要なのではなく、「このような言動もパワハラになり得る」と理解するために参照することをおすすめします。

身体的な攻撃

身体的な攻撃とは、殴る・蹴るなど、身体に危害を加えるタイプのパワハラです。
また、物を投げつけるような行為によって威嚇して相手を従わせようとすることも、これに該当すると考えられます。

なお、この「身体的な攻撃」類型のパワハラは、暴行罪や傷害罪など刑法上の罪にあたる可能性が高いといえます(刑法204条、208条)。
路上などではなく職場内での言動であるからといって、刑法上の罪にあたらないわけではありません。

精神的な攻撃

精神的な攻撃とは、脅迫や名誉毀損、侮辱、ひどい暴言など、精神的な攻撃を加えるタイプのパワハラです。
相手の性的指向や性自認に関する侮辱的な言動も、これに含まれるとされています。

なお、他者に聞こえるように名誉毀損や侮辱をしたり悪口を社内に拡散したりした場合などには、名誉毀損罪や侮辱罪など刑法上の罪にあたる可能性があります(同230条、231条)。

人間関係からの切り離し

人間関係からの切り離しとは、隔離や仲間外れ、無視など、個人を疎外するタイプのパワハラです。
直接暴行を加えたり暴言を吐いたりすることだけがパワハラなのではなく、このような行為もパワハラとなり得ることを知っておきましょう。

過大な要求

過大な要求とは、業務上明らかに不要なことや遂行不可能な業務を押し付けるタイプのパワハラです。
業務とは関係のない私的な雑用を強制的に行わせたり、新卒で入社したばかりであるにもかかわらず、必要な教育がないままに到底対応しきれないレベルの業績目標を課され、それを達成できなかったことに対して厳しく叱責されたりすることなどがこれに該当します。

過小な要求

過小な要求とは、業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じたり、仕事を与えなかったりするタイプのパワハラです。
管理職である者を退職に追い込むため、誰でも遂行可能な業務を行わせることなどがこれに該当すると考えられます。

個の侵害

個の侵害とは、私的なことに過度に立ち入るタイプのパワハラです。
次の内容などが、これに該当すると考えられます。

  • 労働者を職場外でも継続的に監視する
  • 個人の私物を写真で撮影する
  • 上司との面談などで話した性的指向・性自認や病歴、不妊治療などの機微な個人情報について、本人の了解を得ることなく他の労働者に暴露する

【ケース別】パワハラの被害に遭った場合の対処法

職場でパワハラの被害に遭ってしまったら、どのように対処すればよいのでしょうか?
ここでは、3つのケース別に主な対処法や相談先を紹介します。

パワハラをやめさせたい場合

パワハラをやめさせたい場合には、まずは勤務先の会社の窓口に相談しましょう。

パワハラ防止法の規定により、パワハラに関する労働者からの相談に応じたり、雇用管理上必要な措置を講じたりすることが会社(事業主)に義務付けられています(パワハラ防止法30条の2 1項)。
また、パワハラについて相談したことなどを理由として、相談者に対して不利益な取り扱いをすることも禁じられています(同2項)。

しかし、会社が相談に応じてくれない場合や相談しても適切に対処してくれない場合、会社に相談したことで相談者が不利益な取り扱いを受けてしまう場合もあるでしょう。
その場合は、都道府県労働局(総合労働相談コーナー)へ相談してください。

都道府県労働局では相談に乗ってくれるほか、必要に応じて会社への助言や指導などを行います。

話を聞いてほしい場合

パワハラを受けたことが辛く、誰かに話を聞いてほしい場合には、「こころの耳」への相談が有力な選択肢となります。

「こころの耳」とは、働く人のメンタルヘルスをサポートするポータルサイトであり、厚生労働省が運営しています。
「こころの耳」への相談は電話やメール、LINEで行うことができ、曜日によっては22時まで相談が可能です。

また、パワハラによって心身に不調が生じている場合は、病院の受診も検討してください。

相手や会社を訴えたい場合

パワハラをしている相手や、これに対して適切な対処をしなかった勤務先の会社を訴えたい場合は、弁護士へご相談ください。

さきほど解説したとように、パワハラはその内容や態様などによっては刑法上の罪(暴行罪や傷害罪など)に該当します。
この場合は、警察などに告訴をすることで、相手を刑法上の罪に問える可能性があります。

また、相手や会社に対して損害賠償請求をする道もあります。
損害賠償請求とは、相手の不法行為によって生じた損害を金銭で支払うよう請求することです。

これらの法的措置を検討している際には、弁護士へご相談ください。

パワハラを弁護士に相談するメリット

パワハラを弁護士へ相談するメリットは少なくありません。
最後に、パワハラを弁護士に相談する主なメリットを3つ解説します。

具体的な対処法についてアドバイスを受けられる

1つ目は、具体的な対処法についてアドバイスを受けられることです。

パワハラの被害に遭った場合、どのような法的措置が可能であるか自分で判断することは容易ではありません。
弁護士へ相談することで、具体的な状況を踏まえた適切な法的措置についてアドバイスを受けることが可能となります。

「この程度で損害賠償請求ができるかどうかわからない」「刑事罰までは問えない気がする」など悩んでいる場合は、まずは弁護士へ相談するとよいでしょう。
相談料は弁護士によって異なりますが、初回は5,000円から1万円程度で相談できることが一般的です。

Authense法律事務所のように、初回相談を無料としている事務所もあります。

依頼した場合は交渉を代行してもらえる

2つ目は、正式に依頼した場合に、相手方や会社との交渉を代わりに行ってもらえることです。

パワハラの被害を受けている場合、自分で相手方や会社と交渉することが難しい精神状態となっていることも少なくないでしょう。
また、自分で交渉すると不用意な言動をしてしまい、後の損害賠償請求などで不利となるおそれも否定できません。

弁護士へ依頼することで、交渉を代行してもらえるためストレスが軽減されるほか、安心して交渉を任せることが可能となります。

損害賠償請求や刑事告訴の手続きも任せられる

3つ目は、正式に依頼した場合に、損害賠償請求や刑事告訴などを任せられることです。

特に、損害賠償請求は相手方への請求や交渉、相手方が支払わない場合の訴訟の提起などが必要であり、自身で行うことは容易ではありません。
パワハラの内容によっては、告訴をしようにもなかなか受理されない場合もあるでしょう。

弁護士へ依頼することで、損害賠償請求や刑事告訴を代理してもらうことが可能となります。
弁護士が代理することで、相手方が「請求に応じなければ訴訟に移行する」と考え、示談交渉がまとまりやすくなる効果も期待できます。

まとめ

パワハラの3要素6類型を紹介するとともに、パワハラの被害に遭った場合の対処法などについて解説しました。

パワハラについては「パワハラ防止法」に規定があり、ここでパワハラの3要素が定められています。
ある言動がパワハラにあたるかどうか迷ったら、まずはこの3要素を参照するとよいでしょう。

また、パワハラには6類型があるとされています。
実際のケースでは、ある言動が6類型のどれにあたるかを厳密に考える必要はありません。
しかし、6類型を知ることで、どのような行為がパワハラにあたるのか理解がしやすくなるでしょう。

パワハラの被害に遭ってお困りの際は、弁護士へご相談ください。
弁護士へ相談することで、その状況で法的措置がとれるかどうかなどの見通しを立てることができ、具体的な対応を検討しやすくなります。
依頼した場合は、損害賠償請求や刑事告訴などの手続きを任せることができるため安心です。

Authense法律事務所では、パワハラからの被害回復や損害賠償請求などに力を入れており、多くの解決実績があります。
パワハラの被害に遭ってお困りの際や、相手や勤務先に対して法的措置を講じたい際は、Authense法律事務所までお気軽にご相談ください。
初回の相談に限り、原則として無料でお受けしています。

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