刑罰を犯しても、一定期間を経過することで控訴することができなくなります。
では、暴行罪の時効は何年なのでしょうか?
また、暴行罪を犯してしまったら、どのような対応をとればよいでしょうか?
今回は、暴行罪の概要や時効、暴行罪を犯してしまった場合の初期対応などについて弁護士が詳しく解説します。
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暴行罪とは
暴行罪とは、「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったとき」に該当する罪です(刑法208条)。
これとしばしば対比して語られるものに「傷害罪」があり、これは「人の身体を傷害した者」が該当します(同204条)。
「身体を傷害し、よって人を死亡させた」場合は、傷害致死罪に問われます(同205条)。
つまり、他人に対して何らかの暴行(殴る、蹴る、胸倉をつかむ、石を投げる、刃物を振り回すなど)をした結果、相手がケガをすると傷害罪、相手が死亡すれば原則として障害致死罪、相手がけがをしなかった場合は暴行罪にあたるということです。
暴行罪を犯すとどうなる?
暴行の罪を犯すと、どのような事態が生じるのでしょうか?
ここでは、暴行罪を犯した場合に発生し得る事態を2つ解説します。
刑事責任が問われ前科が付く可能性がある
1つ目は、刑事責任を問われる可能性があることです。
暴行罪の刑罰
暴行罪に該当すると、次のいずれかの刑罰の対象となります。
- 2年以下の懲役
- 30万円以下の罰金
- 拘留(1日以上30日未満の期間、刑事施設に収監すること)
- 科料(1,000円以上1万円未満の金員を支払わせること)
暴行罪で逮捕された場合の流れ
暴行などの罪を犯して逮捕されると、最大48時間警察によって身柄が拘束され、捜査がなされます。
その後は検察に身柄が送られ(「送検」といいます)、最初の24時間以内に裁判官への勾留請求がなされます。
勾留請求が認められると、ここから最大10日間(10日間の延長ができるため、トータルで最大20日間)、さらに身柄が拘束されます。
その後は、捜査の結果を踏まえ検察で「起訴(有罪・無罪などを決める刑事裁判にかけること)」か「不起訴(罪を問われずその時点で事件を終結させること)」が決まります。
不起訴となったらその時点で釈放され、その暴行についての罪は不問となることが確定します。
一方で、起訴された場合は刑事裁判が開始され、これにより有罪・無罪や量刑が決まります。
なお、日本においては、起訴されると99.9%の確率で有罪判決が下されるといわれています。
ただし、たとえ有罪であっても執行猶予が付されることはあるため、起訴されたら執行猶予を目指すこととなります。
執行猶予とは刑の執行が一定期間猶予される制度であり、あらかじめ定められた一定の期間を問題なく過ごすことで、刑の言い渡しの効果が消滅する制度です。
つまり、執行猶予付きの有罪判決が下された場合は、問題なく所定の期間を経過することで、前科が消滅するということです。
逮捕イコール有罪ではない
勘違いしている人も少なくないものの、逮捕や勾留(「拘留」とは違います)は、刑罰ではありません。
暴行の罪を犯すと逮捕されることもありますが、これは逃亡を避ける必要性から、捜査期間中に一時的に身柄を警察署などに留め置く措置です。
たとえ罪を犯していても逃亡のおそれがないと判断された場合は、逮捕されることなく在宅のままで捜査がなされることもあります。
また、逮捕されたからといって必ずしも有罪となるわけでもなければ、逮捕されなかったからといって必ずしも有罪とならないわけでもありません。
逮捕されてもその後不起訴となることもあれば、逮捕されずに在宅のまま起訴され、有罪となることもあります。
刑事事件について調べる際は、これらを混同しないよう注意しましょう。
民事責任が問われ損害賠償請求がされる可能性がある
2つ目は、民事上の責任を問われて損害賠償請求をされる可能性があることです。
混同されがちな点ですが、先ほど解説した刑罰はあくまでも「犯人と国」との問題です。
たとえ暴行罪で有罪となり罰金刑に処されても、被害者に対して金銭が支払われるわけではありません。
一方で、民事は「犯人(加害者)と被害者」の問題です。
加害者の行為によって被害者に損害が生じたり精神的苦痛が生じたりした場合は、被害者から損害賠償請求や慰謝料請求がなされる可能性があります。
このように、刑事と民事とは、本来別次元の問題です。
しかし、実務上は被害者に対して賠償金を支払って被害者との示談交渉がまとまることで刑事上の暴行罪も不起訴となることが多く、刑事と民事は密接に関連しています。
暴行罪の時効は何年?
暴行の罪を犯した場合、時効は何年なのでしょうか?
刑事と民事とに分けて解説します。
刑事責任の時効
刑事事件における時効のことを、「公訴時効」といいます。
これは起訴することができる期間を指し、所定の公訴時効期間が経過すると、たとえ実際に暴行の罪を犯していたとしても起訴することができなくなります。
暴行罪の公訴時効は、3年です。
刑事上の時効は人を死なせたかどうかや法定刑の重さによって決まっており、「長期5年未満の懲役もしくは禁錮または罰金にあたる罪については3年」とされていることから、暴行罪の時効は3年となります(刑事訴訟法250条2項6号)。
なお、暴行の結果として相手にけがをさせた場合は暴行罪ではなく「傷害罪」にあたりますが、傷害罪の刑罰は15年以下の懲役または50万円以下の罰金です(刑法204条)。
そのため、時効の判断では「長期15年以上の懲役または禁錮に当たる罪」に該当し、時効は10年となります(刑事訴訟法250条2項3号)。
民事責任(損害賠償請求)の時効
民事上の損害賠償請求にも、時効による制限があります。
暴行をした場合における民事上の時効は、原則として権利の行使ができることを知ったとき(被害者などが、損害と加害者を知ったとき)から5年間です(民法166条1項1号)。
ただし、加害者が誰かわからない場合であっても、暴行のときから20年間を経過すると、もはや損害賠償請求をすることができなくなります(同166条1項2号、同167条)。
暴行罪の刑事上の時効が停止する事由
暴行罪の刑事上の時効は原則として3年であるものの、必ずしも3年間の経過をもって時効が成立するわけではありません。
一定の事由が生じた場合は一定期間時効の進行が停止することとされています。
ここでは、刑事上の時効が停止する一定の事由について解説します。
公訴の提起
その事件について公訴が提起されると、公訴棄却の裁判が確定するまでの間、時効の進行が停止します(刑事訴訟法254条1項)。
なお、共犯である場合、共犯の一人に対してした公訴の提起による時効の停止は、他の共犯に対してもその効力を有することとされています(同2項)。
国外にいる場合
犯人が国外にいる場合は、時効の進行が停止します(同255条1項)。
そのため、「国外に逃亡して、3年が過ぎたら帰国する」ことには意味がありません。
たとえ3年間国外にいた場合は、国外にいた3年間は除いて時効のカウントがされることとなるためです。
起訴状の謄本送達ができなかった場合
犯人が逃げたり隠れたりしていることによって有効に起訴状の謄本の送達や略式命令の告知ができなかった場合は、その期間中は時効が進行しないこととされています(同255条1項)。
暴行罪を犯してしまった場合の初期対応
暴行の罪を犯してしまった場合、まずはどのように対応すればよいのでしょうか?
最後に、暴行をしてしまった場合の初期対応について解説します。
早期に弁護士へ相談する
暴行の罪を犯してしまったら、自分一人で悩み続けることはおすすめできません。
一人で悩んだりインターネットで検索したりしても暴行をした事実が消えるわけでもなければ、逃げ通すための方法なども見つからないことでしょう。
むしろ、逃げたり隠れたりしてしまうと、罪が発覚したときに身柄の拘束期間が長くなる可能性があるほか、罪が重くなるリスクもあります。
そのため、刑事弁護に強みを持つ弁護士に早期にご相談ください。
弁護士へ相談することで、その事件で問われる可能性がある罪について具体的な想定がしやすくなるほか、今後とるべき対応などについても検討しやすくなります。
被害者との示談を目指す
先ほど解説したように、原則として刑事と民事とは別の問題です。
しかし、被害者との示談が成立することで、不起訴(つまり、事実上の無罪)となる可能性が高くなります。
そのため、暴行の罪を犯してしまったら、できるだけ早期に被害者との示談を目指すとよいでしょう。
なお、示談を自分で行うと双方がともに感情的になってしまい、示談交渉がまとまりづらくなることが懸念されます。
また、相手から足元を見られて法外な示談金を請求される可能性もあるでしょう。
そのような事態を避けるため、示談交渉は弁護士へお任せください。
弁護士へ依頼することで、適正な金額で示談交渉がまとまりやすくなります。
また、示談交渉が成立したらそのことを証明する示談書を作成しますが、弁護士に依頼した場合は「この件で被害届を提出しない」「刑事処罰を望まない」など、刑事上の罪に問われないための文言を漏れなく入れてもらうことができ、安心して任せられます。
せっかく被害者との示談が成立しても、示談書に不備があると、修正後の示談書に再度押印してもらえないかもしれません。
自首する
暴行の罪を犯してしまったら、弁護士とともに自首することも一つの選択肢となります。
自首とは、自身が暴行の罪を犯した事実を自主的に捜査機関に申告し、処罰を求めることです。
自首することで不起訴となる可能性が高まるほか、たとえ起訴されても減刑される可能性が高くなります。
なお、自首をすることができるのは、捜査機関が犯罪行為を把握する前です。
被害者がすでに暴行事件について被害届を提出しており、捜査機関が捜査を開始している場合は、もはや自首することはできません。
この場合であっても、罪を認めて自ら「出頭」をすることはできるものの、減刑の効果は非常に限定的となります。
そのため、すでに被害届が出されている場合は自首をするのではなく、一刻も早く被害者との示談成立を目指すべきでしょう。
とはいえ、状況に応じてどのような手段をとることが最適であるか、自身で判断することは容易ではありません。
対応を一つ誤ると不利となるおそれがあるため、自分で何らかの行為をする前に、刑事弁護に強い弁護士へできるだけ早期にご相談ください。
まとめ
暴行罪とは、暴行を加えた相手が傷害するに至らなかったときに該当する罪です。
傷害罪や傷害致死罪とは、暴行がもたらした結果によって区分されています。
暴行罪の民事上の時効は原則として5年であり、刑事上の時効は原則として3年です。
ただし、刑事上の時効は海外にいる期間や逃げ回っている期間は進行が停止するため、必ずしも3年の経過をもって成立するわけではありません。
暴行の罪を犯してしまったら、被害者との示談成立を目指すほか、自首をすることが有力な選択肢となります。
しかし、自身で状況に応じた適切な対応を見極めたり、被害者との示談を成立させたりすることは容易なことではありません。
そのため、暴行の罪を犯してしまってお悩みの際は、できるだけ早く弁護士へご相談ください。
弁護士へ相談して早期に適切な対応をとることが可能となり、不起訴となったり減刑されたりする可能性が高くなるためです。
Authense法律事務所では暴行罪における刑事弁護に力を入れており、多数の対応実績があります。
暴行の罪を犯してしまいお悩みの場合や被害者との示談交渉を任せたい場合、家族などが暴行罪で逮捕されてお困りの際などには、できるだけ早期にAuthense法律事務所までご相談ください。
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