コラム
公開 2023.12.27

単体97_新規_痴漢の冤罪被害に遭ったら?初期の対処法を弁護士がわかりやすく解説

日ごろから満員電車に乗る機会の多い人にとっては、痴漢の冤罪は恐れるべき事態の1つではないかと思います。

万が一痴漢行為を疑われたら、どのように対処すればよいのでしょうか?
反対に、避けるべき対応はどのようなものなのでしょうか?

今回は、痴漢の冤罪被害に遭った場合の初期態様について弁護士が詳しく解説します。

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痴漢冤罪とは

痴漢冤罪とは、実際は痴漢行為をしていないにもかかわらず、痴漢をしたものと扱わることです。

そもそも、痴漢は人が密集して他者の手元が見えにくい電車内など、他者の視界に入りにくい場所で行われやすい犯罪です。
その反面、痴漢をしたかどうかについて当事者以外が確信を持てないことが多く、冤罪被害が生まれやすい犯罪であるといえます。

痴漢が該当する可能性のある罪

「痴漢罪」などという名称の罪は存在しません。
では、痴漢はどのような罪に該当するのでしょうか?
痴漢が該当し得る主な罪を2つ解説します。

不同意わいせつ罪

不同意わいせつ罪とは、暴行や脅迫を用いることなどにより、被害者が「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為」をした場合に該当する罪です(刑法168条)。

以前は「強制わいせつ罪」と呼ばれていましたが、2023年7月13日の刑法改正によって少し内容が変わり、「不同意わいせつ罪」となりました。
被害者を脅して痴漢をした場合のほか、衣服の中に手を入れるなどした場合なども不同意わいせつ罪にあたる可能性があります。

不同意わいせつ罪の刑罰は、6か月以上10年以下の拘禁刑です。

迷惑防止条例違反

痴漢は、各都道府県の迷惑防止条例違反に当たる可能性が高いといえます。

たとえば、東京都の場合は「何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない」との規定があり、対象の行為として「公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること」が挙げられています(東京都迷惑防止条例第5条1項1号)。

電車の中などで衣服の上から体を触る痴漢行為を働いた場合は、この迷惑防止条例違反にあたる可能性が高いでしょう。
この規定に違反すると、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金の対象となります(同8条1項2号)。

痴漢の冤罪でその場から逃げない方がよい理由

痴漢の冤罪に巻き込まれた場合、その場から逃亡しようと考えるかもしれません。
しかし、その場からの逃亡は、絶対に避けるべき行為の1つです。
痴漢冤罪でその場から逃げない方がよい理由を6つ解説します。

逃げても後日逮捕される可能性が高いから

駅構内には、複数の防犯カメラが設置されていることが一般的です。
また、逃げると目立ってしまい、居合わせた人に動画などを撮影される可能性も低くありません。

そのため、その場から立ち去ったからといって逃げ切れる可能性は非常に低く、後日警察官が逮捕される自宅や職場などを訪れて逮捕される可能性が高いでしょう。

勾留期間が長くなる可能性があるから

痴漢の冤罪に巻き込まれた際にその場から逃げてしまうと、検察などから「逃亡の危険性のある人物」として取り扱われます。
その結果、逮捕後の勾留期間が長くなる可能性が高くなります。

痴漢で逮捕されると、まずは警察で最大48時間の身体拘束がなされ、その後検察に身柄が送致されます。
その後は、さらに最大20日間(原則10日+最大10日延長)検察に勾留され、その間に事件の捜査が進行します。

ただし、この段階では有罪・無罪は確定していませんが、逃亡のおそれがないなどと弁護士が主張し働きかけることで身体拘束を解かれ、釈放された状態で捜査を進めてもらえる可能性が生じます。

一方で、痴漢の疑いを掛けられた時点でその場から逃亡した場合には、いくら弁護士が「逃亡のおそれはない」などと主張しても説得力に欠け、釈放が認められず勾留期間が長くなる可能性が高くなります。

有罪判定において不利となりやすいから

痴漢の冤罪に巻き込まれた際にその場から逃亡すると、有罪・無罪の判定などにおいて不利となるおそれがあります。
簡単にお伝えすると、「実際に痴漢をしていないなら、逃げる必要はなかったでしょう」と考えられ、被告人(痴漢を疑われている者)にとって不利な事実として認定されかねないということです。

保釈請求が認められにくくなるから

痴漢冤罪でその場から逃亡すると、保釈請求が認められにくくなるおそれがあります。

事件の捜査が進行すると、検察官が「起訴(刑事裁判を開始すること)」か「不起訴」か決定します。
不起訴となった場合は罪に問われることなく事件が終結する一方で、起訴をされるとその後刑事裁判が開始され、有罪・無罪や量刑などが決まります。

そして、「保釈請求」とは、起訴をされた後で保釈金を支払い、身体拘束からの解放を求めることです。
たとえ無罪を主張していても、逃亡のおそれがないと判断されれば保釈請求が通る可能性がある一方で、痴漢容疑をかけられた時点で逃亡を試みている場合は「逃亡のおそれがある」と判断され、保釈請求が認められにくくなる可能性があります。

別の罪に該当する可能性があるから

痴漢冤罪で逃亡する場合、安全に逃亡できることはまれでしょう。
たとえば、線路上を走って逃げて電車の安全運航を妨げたり、通行人を押しのけて転倒させたりするおそれがあります。

この場合は、威力業務妨害罪や暴行罪、鉄道営業法違反など別の罪に問われる可能性があるほか、電車を停止させた場合は多額の損害賠償請求がなされる可能性も生じます。
場合によっては、痴漢そのものよりも重い罪を犯すこととなりかねません。

大事故につながるおそれがあるから

痴漢冤罪で逃亡すると、大事故につながるおそれがあります。

先ほど解説したように、人を押しのけて逃げると通行人などに大きなけがをさせる可能性があるほか、階段やホームなどから転落させ死亡させてしまう可能性もあります。
また、自身が転倒したり線路上に逃げた結果電車と積極したりして、大けがや死亡事故につながるリスクもあるでしょう。

痴漢冤罪に遭った場合の正しい初期対応

痴漢の冤罪に遭った場合、その場からの逃亡を避けるべきことは、ここまで解説してきたとおりです。
では、痴漢冤罪に巻き込まれた場合は、どのように対応すればよいのでしょうか?
ここでは、痴漢の容疑をかけられた際の初期対応について解説します。

その場ですぐに目撃者を探す

痴漢の容疑をかけられたら、すぐにその場で目撃者を探してください。

電車の中で「痴漢です!」などといわれた場合、電車を降りてから目撃者を探すことはほぼ不可能です。
そのため、痴漢をしていないことを主張し、痴漢していないことや(いる場合は)真の痴漢を目撃していないか、周囲の人へ確認してください。

ただし、冒頭で解説したように、痴漢はそもそも人目に付きにくい空間で行われやすい犯罪です。
そのため、痴漢をしていないことの目撃者が見つかればよいものの、見つかる可能性はさほど高くはないでしょう。

被害者との会話を録音する

痴漢の容疑をかけられたら、可能な限り被害者との会話を録音します。
痴漢容疑が事実無根である場合、会話を録音しておくことで、あとから被害者の証言の矛盾点が見つけやすくなるためです。

冤罪であることを主張し続ける

痴漢が冤罪である場合、当初から一貫して冤罪であることを主張してください。
たとえその場を収める目的であったとしても、一度でも痴漢を認めてしまうと不利になりやすいためです。

謝らない

痴漢が冤罪である場合は、絶対に謝ってはいけません。

近くに立っている被害者が「痴漢です」などと声を上げた場合、荷物が当たったのかもしれないなどと考え、咄嗟に「すみません」などといってしまうかもしれません。
しかし、謝ってしまうと痴漢を認めたこととなりかねず、被害者の疑いが確信に変わってしまう可能性が高くなります。

そのため、痴漢の容疑をかけられた場合は、「すみません」など謝罪と取れる言葉を発しないよう注意してください。

被害者の衣服に触らない

痴漢の嫌疑をかけられた場合、手に粘着テープなどが貼られ、被害を主張している者の衣服の繊維が付着していないかどうかを確認されることがあります。
そのため、何があっても被害者の衣服には一切触れてはなりません。

供述調書に署名押印しない

痴漢の容疑を掛けられた場合は、そのまま最寄りの警察署などへ連行され、供述をとられることとなります。

この際、警察が作成した供述調書に署名を求められますが、この供述調書には安易に署名をしてはなりません。
供述調書に痴漢を自供した旨の記載がある場合、これにサインをしてしまうと痴漢を認めたこととなるためです。

たとえ「気が動転してよく読まずにサインしてしまった」などと主張しても、署名や押印をしてしまうと調書に記載された内容を覆すことは非常に難しくなります。
そのため、少しでも納得できない記述や理解のできない記述がある場合は、署名も押印もしないようにしてください。

すぐに弁護士へ相談する

痴漢の嫌疑をかけられたら、すぐに弁護士を呼んでください。
弁護士を呼ぶのは、早ければ早いほど有利な結果をもたらしやすくなります。

動転するあまり不利な供述をとられてしまわないためにも、痴漢を断固として否定したまま、できるだけ早く弁護士を呼んでください。

痴漢冤罪事件で弁護士は何をしてくれる?

痴漢の冤罪事件で、弁護士は何をしてくれるのでしょうか?
実際の弁護活動はケースバイケースであるものの、一般的な内容を紹介します。

勾留請求の回避を目指す

痴漢の容疑で逮捕されその後勾留までなされると、合計して最大23日間警察や検察に身柄が留め置かれることとなります。
その間は原則として外部と連絡を取ることはできず、会社に出勤することもできません。

これほどの長期間欠勤すれば「何かあった」を思われることは必至であり、痴漢の容疑で逮捕されていることがわかると、たとえ冤罪であっても解雇されるリスクがあります。

そこで、弁護士はまず勾留請求の回避を目指します。
たとえ逮捕されても証拠隠滅や逃亡のおそれがないと判断されて勾留が回避できれば、逮捕から最大72時間(3日間)で自宅に帰ることが可能となります。

勾留の取り消しを求める

勾留請求がいったん認められたとしても、証拠隠滅や逃亡のおそれがない旨を主張することで勾留が取り消される可能性があります。
そのため、勾留請求が認められてしまった後は、勾留の取り消しを目指して弁護活動を行います。

家族や職場への対応をする

痴漢容疑で逮捕されると、その後は外部へ連絡を取ることができません。
原則として、家族へは警察から連絡が入ることとなります。
警察からの連絡で痴漢容疑での逮捕を知った場合、家族はショックを受けてしまうことでしょう。

そのため、家族の心情を配慮しつつ弁護士が家族に連絡を入れます。
痴漢が冤罪である場合、家族への連絡では本人が容疑を否定していることを強調します。

また、勤務先にも弁護士から連絡を入れ、逮捕されたものの冤罪であり解雇しないよう申し入れます。
なお、状況によっては痴漢容疑であることを伝えないこともあります。

示談交渉をする

実際に痴漢をしていなかったとしても、痴漢容疑を否定したまま、被害者(とされている者)と示談交渉をすることが少なくありません。
示談が成立することで、不起訴処分を勝ち取れる可能性が高くなるためです。

そのため、被害者との示談交渉をまとめることが、現実的な解決策の1つとなります。

相手に対する損害賠償請求をする

痴漢の冤罪が被害者の勘違いや人違いなどであることもある一方で、中には嘘の痴漢被害を主張することもあるようです。
相手が嘘の被害を申告していた場合は、相手に対して損害賠償請求が認められる可能性があります。
この損害賠償請求についても、弁護士に任せることが可能です。

まとめ

痴漢の冤罪に巻き込まれた際の初期対応や、逃亡をすべきでない理由などについて解説しました。

痴漢の嫌疑をかけられた際は冤罪であるとの主張を曲げず、相手に謝ったり事実とは異なる供述調書に署名や捺印をしたりしないよう注意が必要です。
痴漢の疑われた場合、初期対応を誤ってしまうと疑いを払うことが困難となります。
痴漢の冤罪に巻き込まれたら、謝った対応をしてしまう前に、できるだけ早期に弁護士を呼ぶようにしてください。

Authense法律事務所では、痴漢の冤罪を晴らす対応に力を入れています。
痴漢の冤罪で逮捕されそうな場合や、家族が痴漢の冤罪で逮捕されてしまった場合などには、Authense法律事務所までご連絡ください。

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