傷害の罪を犯してしまった場合、不起訴や刑罰の軽減を目指すためには、被害者との示談が近道となります。
傷害罪の示談金の目安は、どの程度なのでしょうか?
また、被害者との示談交渉は、一般的にどのような流れとなるのでしょうか?
今回は、傷害罪での示談金の目安額や交渉の流れなどについて、弁護士が詳しく解説します。
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傷害罪とは
傷害罪とは、人の身体を傷害した場合に該当する罪です(刑法204条)。
たとえば、人を殴って怪我をさせたり、人に対して物を投げて怪我をさせたりした場合などがこれに該当します。
ここでいう「傷害」は身体的な怪我に限られず、病気の発症や、心的外傷後ストレス障害(PTSD)も該当すると解されています。
そのため、たとえば再三にわたって嫌がらせの電話をかけた結果、相手が睡眠障害を発症した場合なども傷害罪に該当し得ます。
傷害罪に該当すると、15年以下の懲役または50万円以下の罰金の対象となります。
なお、相手を殴るなどしたものの、結果的に相手が怪我などをしなかった場合もあるでしょう。
この場合は傷害罪ではなく、暴行罪の対象となります(同208条)。
暴行罪の刑罰は、2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料です。
傷害罪の示談金の基本的な概要
傷害罪の示談金とは、どのようなものを指すのでしょうか?
また、傷害事件を起こした場合、被害者と示談交渉をまとめることには、加害者側にとってどのようなメリットがあるのでしょうか?
順を追って解説します。
示談金とは
示談金とは、裁判外での交渉によって加害者から被害者に対して支払われる金銭です。
傷害事件は刑事事件の対象となるほか、被害者から加害者に対する損害賠償請求や慰謝料請求の対象ともなります。
この損害賠償額などについて裁判外で交渉を成立させ、加害者から被害者に対して支払う金銭の総称を「示談金」といいます。
傷害罪で示談交渉を行う主な目的・メリット
傷害事件で被害者と示談交渉を行う最大の目的(メリット)は、事件による影響を最小限に抑えることです。
本来、示談は「民事(加害者対被害者)」の問題であり、加害者の有罪・無罪や量刑を決める「刑事(国対加害者)」とは別の問題です。
しかし、実際には被害者との示談交渉が成立していることは、刑事の面にも大きく影響することが少なくありません。
まず、被害者が警察などの捜査機関に対して告訴状を出す前に示談交渉がまとまれば、事件化自体を避けられる可能性があります。
また、告訴状が出された後でも、告訴状の取り下げを条件として示談金交渉をまとめることで、告訴状を取り下げてもらうことで事件化を避けることが可能です。
さらに、すでに加害者が逮捕され身柄を拘束されている場合であっても、示談が成立していれば不起訴となり釈放される可能性が高くなります。
「不起訴」とはその事件について刑事裁判を行わない旨の決定であり、事実上の無罪放免を意味します。
このようなことから、傷害の罪を犯してしまった場合、その影響を最小限に抑えるには、被害者との示談成立を目指すことがもっとも重要となります。
傷害罪での示談金の相場
傷害罪での示談金の目安はどの程度なのでしょうか?
ここでは、示談金の考え方を解説します。
傷害罪での示談金相場
傷害罪での示談金には一定の目安があるわけではなく、ケースバイケースです。
なぜなら、示談金は次の金額などが含まれると解されており、これらの算定結果は具体的な状況によって異なるためです。
- 治療費:怪我の治療に要した費用
- 休業損害:怪我で仕事ができなかった期間に対応する補償
- 慰謝料:精神的苦痛を償うための金銭
一般的には、被害者の怪我が軽症である場合は数十万円程度、怪我が重く後遺症が残った場合や休業期間が長くなった場合などには数百万円単位になる傾向にあります。
示談金の額は状況によって大きく異なる可能性が高いため、実際のケースでは弁護士へご相談ください。
傷害罪での示談金が高くなりやすいケース
傷害罪で示談金が高くなりやすいのは、次のケースなどです。
怪我の程度が大きい場合
1つ目は、被害者の怪我の程度が大きい場合です。
中でも、被害者に怪我の後遺症が残った場合や休業期間が長くなった場合などには、示談金が高くなる傾向にあります。
後遺症の度合いによっては1億円以上の示談金が必要となることもあり、この場合は示談交渉をまとめることは困難です。
犯行が悪質である場合
2つ目は、犯行が悪質である場合です。
被害者が多い場合や凶器を用いた場合など犯行の悪質性が高い場合は、示談金が高くなる傾向にあります。
この場合は、被害者の精神的苦痛が大きくなりやすいためです。
傷害罪に問われた場合の示談交渉の流れ
傷害の罪に問われた場合、示談交渉はどのように進めればよいのでしょうか?
示談交渉の基本的な流れは次のとおりです。
弁護士へ相談する
示談交渉を自分で進めることは容易ではありません。
本人が逮捕されていれば物理的に自分で示談交渉をすることは不可能です。
また、被害者の身元が分からない場合は自分で相手を探し出すことは困難であるうえ、加害者が自身の身元を探し出したとなれば被害者に恐怖を感じさせてしまいさらなるトラブルに発展するおそれもあります。
そのため、傷害事件の示談交渉は、弁護士に依頼することが一般的です。
逮捕されていない場合は自分で弁護士を探し、コンタクトをとることができます。
一方で、逮捕されると携帯電話などを自由に使うことはできません。
家族などが弁護士を探し、依頼することが現実的です。
なお、被疑者が勾留(逮捕後警察官で最大48時間身柄が拘束され、その後検察で24時間拘束された後、検察が裁判所に勾留請求することで認められる最大20日間の身体拘束)されると国選弁護士を付けてもらうことができますが、国選弁護士はあくまでも刑事裁判の弁護をするのみであり、原則として示談交渉は行いません。
国選弁護士は自分で選ぶことができず、刑事事件を特化していない弁護士が選ばれる可能性もあります。
そのため、弁護士に示談交渉を依頼したい場合や刑事事件に強い弁護士を自分で選びたい場合、勾留前(逮捕前や、逮捕から勾留までの間)から弁護士を付けたい場合などには、国選弁護士ではなく、自分で(または家族が)弁護士を選んで依頼するとよいでしょう。
弁護士から検察などに示談の意思を申告する
弁護士が選任されたら、弁護士が捜査機関(警察や検察)に対して示談の意思を申告します。
そのうえで、被害者の連絡先を開示してもらうよう依頼します。
検察などが被害者に示談交渉に応じる意向を確認する
たとえ弁護士であっても、警察や検察から無条件で被害者の連絡先を教えてもらえるわけではありません。
弁護士から示談の申し入れがあったら、警察や検察が被害者に連絡を取り、示談交渉の目的で被疑者(犯人)側の弁護士に連絡先を教えてよいか確認します。
この際、被疑者本人には連絡先を開示せずあくまでも弁護士が知るだけであることを条件とすることで、開示に同意してもらえる可能性が高くなります。
被害者の連絡先が弁護士に開示される
被害者が連絡先の開示に同意をすると、警察や検察を通じて弁護士に被害者の連絡先情報が開示されます。
示談交渉を開始する
被害者の連絡先が開示されたら、速やかに示談交渉を開始します。
示談交渉は、被疑者による謝罪文を弁護士が持参するとともに、示談金の支払いを申し入れる形で進行することが一般的です。
無事に示談交渉がまとまったら、示談金の支払いと引き換えに示談書に署名や捺印をしてもらいます。
示談書には示談金の額のほか、被害者が犯人の処罰を望まない旨の文言を入れることが一般的です。
示談書に署名や押印を受けたらこれを捜査機関に提示します。
その結果、不起訴となる可能性を高めることが可能となります。
傷害罪の示談金交渉を弁護士に依頼すべき理由
傷害罪での示談金交渉は、自分や家族が行うのではなく弁護士に依頼して行うべきです。
最後に、示談金交渉を弁護士に任せた方がよい理由を4つ解説します。
物理的に自分での示談交渉が困難だから
1つ目は、本人が逮捕されている場合、自分で示談交渉をすることは物理的に不可能であるからです。
逮捕期間中は、原則として弁護士以外の外部の者と接触することはできません。
スマートフォンなども没収されます。
本人が逮捕されている以上、自分で被害者と示談交渉を進めることは不可能です。
示談の前提となる被害者の連絡先開示を受けやすくなるから
2つ目は、被疑者が被害者の身元を知らない場合において、被疑者本人への情報開示には被害者が同意しないことが一般的であるからです。
被害者は被疑者(犯人)から怪我や病気を負わされている以上、その犯人に身元を知られることに恐怖を感じることが多いでしょう。
そのため、仮に被疑者が逮捕されておらず自分で示談交渉に出向ける状態であったとしても、被害者の連絡先情報がわからず示談交渉のスタート地点にさえ立てないことが少なくありません。
一方で、弁護士を経由する場合は、被疑者には連絡先情報を開示しないとの条件付きで連絡先の開示に応じてもらえる可能性が高くなります。
示談交渉がまとまりやすくなるから
3つ目は、示談交渉がまとまりやすくなるからです。
傷害事件の加害者と被害者が直接対峙して示談交渉を行えば、相手が恐怖や大きなストレスを感じる可能性があるほか、感情的になってさらなるトラブルに発展するかもしれません。
そのため、当事者同士が直接示談金交渉をすることは、現実的ではないでしょう。
弁護士が示談交渉を行うことで、冷静な示談交渉がしやすくなり、交渉がまとまりやすくなる効果が期待できます。
法外な示談金を請求されるリスクを減らせるから
4つ目は、法外な示談金を請求されるリスクを抑えることができることです。
被害者によっては、被疑者の足元を見て怪我や受けた不利益などに対して法外ともいえる示談金を請求することもあります。
直接示談交渉をした場合には、たとえ法外な金額であっても、不起訴となる利益を得たいとの思いから交渉に応じてしまうかもしれません。
しかし、被害者としても示談交渉が決裂した場合は改めて裁判上で損害賠償請求をする必要が生じるうえ、裁判上で認められる損害賠償額はその事例に応じた一般的な金額となります。
そのため、示談を受け入れた方が、労力が少なくなるうえ受け取ることのできる金額も大きくなることが一般的です。
このような点を踏まえて弁護士が交渉することで、適正額で示談交渉がまとまる可能性が高くなります。
また、示談交渉がまとまったら示談金の支払いと同時に示談書への署名や押印を受けるため、いったんまとまった示談交渉を蒸し返されたり、後から追加で示談金を請求されたりする事態を避けることも可能となります。
まとめ
傷害事件を起こしてしまったら、早期に弁護士に連絡を取り被害者との示談金交渉を行うことが先決です。
なぜなら、被害者との示談交渉がまとまれば事件化を避けられる可能性が高くなるほか、すでに告訴状が出されていてもこれを取り下げてもらえたり、不起訴となったりする可能性が高くなるためです。
傷害事件での示談金には決まった相場があるわけではなく、被害者の怪我の程度や後遺症の有無、仕事を休んだ期間など被害者に与えた影響の大きさ、事件の悪質性などに寄って大きく異なります。
一般的には数十万円程度のことが多いものの、被害者に後遺症が残った場合は数千万円から1億円程度の示談金が必要となることもあるなど、金額にも大きな幅があります。
傷害事件での示談金の額はインターネット上の情報だけで判断することは困難であり、自分で色々と調べるより、一刻も早く弁護士へご相談ください。
Authense法律事務では刑事事件での弁護活動や被害者との示談金交渉に力を入れており、豊富な解決実績があります。
傷害容疑で家族が逮捕されてしまった場合や、傷害の罪を犯してしまいお困りの際などには、Authense法律事務所までご相談ください。
刑事事件の示談金交渉は遅くとも検察から起訴されるまでに成立させる必要があり時間との勝負でもあることから、できるだけ早期のご相談をおすすめします。
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