路上で痴漢行為をしてしまった場合、どのような罪に該当するのか、また逮捕される可能性はあるのかなど不安に感じることでしょう。
路上痴漢は犯罪であり、迷惑防止条例違反や不同意わいせつ罪などに該当する可能性があります。
また、路上痴漢行為が発覚すれば逮捕される可能性や、前科が付く可能性も否定できません。
今回は、路上痴漢が該当し得る罪や逮捕された場合の流れ、弁護士へ依頼するメリットなどについて弁護士が詳しく解説します。
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路上痴漢とは
路上痴漢は、法律上の用語ではありません。
一般的には、路上で痴漢行為(相手の身体を触るなどのわいせつ行為)をすることを指します。
路上痴漢は電車内などでの痴漢と同じく犯罪行為であり、逮捕されて前科が付く可能性があります。
路上痴漢で逮捕される2つのパターン
路上痴漢による逮捕には、次の2つのパターンが考えられます。
現行犯逮捕
現行犯逮捕とは、現に罪を行い、また現に罪を行い終わって間もない者を逮捕することです(刑事訴訟法212条1項)。
代表的なケースとしては、路上痴漢に及んでいる最中に逮捕される場合が挙げられます。
また、次の場合はその者が罪を行い終わって間もない者に該当する場合に、現行犯逮捕をすることが可能とされています(同条2項)。
- 犯人として追呼されているとき
- 明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器などを所持しているとき
- 身体または被服に犯罪の顕著な証跡があるとき
- 何をしているのかと声を掛けられて逃走しようとするとき
現行犯逮捕をするために、逮捕令状は必要ありません。
また、警察官ではない者であっても、逮捕することが可能です。
なぜなら、現行犯逮捕では誤認逮捕が起きる可能性が低いと考えられるためです。
後日逮捕
後日逮捕とは、犯行後捜査の中で浮上した犯人を逮捕することです。
一般的な逮捕の形態であることから、通常逮捕とも呼ばれます。
後日逮捕をするには令状の発布が必要であり、また警察官など限られた人のみが行うことができます。
路上痴漢であっても、防犯カメラの映像などから犯行が発覚し、後日逮捕される可能性は十分にあり得ます。
路上痴漢が該当し得る罪
路上痴漢は、次の罪に該当する可能性があります。
迷惑防止条例違反
路上痴漢は、各都道府県が制定する迷惑防止条例違反(正式名称は「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」など)に該当する可能性があります。
東京都迷惑防止条例には、「人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であって、公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること」を禁止する旨の規定が設けられています(東京都迷惑防止条例5条1項1号)。
これに違反した場合は、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金に処される可能性があります。
不同意わいせつ罪
不同意わいせつ罪は、改正によって2023年7月13日から新たに施行されている刑法上の罪です。
従来の「強制わいせつ罪」や「準強制わいせつ罪」が、不同意わいせつ罪に改正されました。
次の行為などによって同意しない意思の形成や表明を困難な状態にしたり、相手がその状態にあることに乗じたりしてわいせつな行為をした場合は、不同意わいせつ罪に該当します。
- 暴行や脅迫
- 心身の障害
- アルコールや薬物の摂取
- 睡眠その他の意識が明瞭でない状態
- 同意しない意思を形成したり表明したりするいとまがないこと(いわゆる「不意打ち」)
- 予想と異なる事態に直面させたことによる恐怖や驚愕(いわゆる「フリーズ状態」)
- 虐待に起因する心理的反応
- 経済的・社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること
- 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせたり人違いをさせたりすること
また、これらのいずれにも該当しない場合(たとえば、相手との合意がある場合)であっても、次の場合においてわいせつな行為をした場合は不同意わいせつ罪に該当します。
- 相手が13歳未満である場合
- 相手が13歳以上16歳未満であり、行為者が5歳以上年長である場合
不同意わいせつ罪には罰金刑はなく、この罪を犯した場合は6か月以上10年以下の拘禁刑に処される可能性があります。
逮捕とは何か
路上で痴漢行為をすると、逮捕される可能性があります。
逮捕については誤解が少なくないため、ここで整理します。
逮捕とは
逮捕とは、犯罪行為をしたとの嫌疑をかけられている者(「被疑者」といいます)の身柄を拘束し、これを短期間継続することです。
逮捕は刑罰ではなく、被疑者の逃亡や証拠隠滅を防ぐ目的で行われるものです。
また、逮捕と有罪・無罪は、直接結びついているわけではありません。
その被疑者が罪を犯したことが明白であっても、逃亡や証拠隠滅のおそれがない場合、逮捕されないまま在宅で(通常の生活を送りながら)起訴され有罪となることもあります。
一方で、逮捕されてもその後の捜査で十分な証拠が見つからなかったり被害者との示談が成立していたりする場合は、不起訴(刑事裁判にかけないこと。)となることもあります。
この点について混同しないようにしてください。
逮捕の要件
逮捕は、どのような場合であってもできるわけではありません。
逮捕できるのは、次の2つの要件をいずれも満たした場合のみです。
罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること
1つ目の要件は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があることです(刑事訴訟法199条1項)。
ただし、30万以下の罰金や拘留、科料にあたる罪について逮捕ができるのは、次のいずれかの要件を満たすときのみとされています。
- 被疑者が定まった住居を有しない場合
- 正当な理由がなく出頭の求めに応じない場合
なお、迷惑防止条例違反も不同意わいせつ罪も、「30万以下の罰金や拘留、科料にあたる罪」にはあたりません。
「明らかに逮捕の必要がないと認めるとき」ではないこと
罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があったとしても、明らかに逮捕の必要がないと認めるときは逮捕をすることができません。
たとえば、逃亡や証拠隠滅のおそれがない場合は「明らかに逮捕の必要がないと認めるとき」に該当する可能性があり、これを主張することで逮捕を回避できる可能性があります。
路上痴漢で逮捕を回避する方法
路上痴漢をした場合、逮捕を回避する主な方法は次のとおりです。
自首をする
自首をすることで、路上痴漢による逮捕を回避できる可能性があります。
なぜなら、わざわざ自首をした人は逃亡や証拠隠滅のおそれが低く、「明らかに逮捕の必要がないと認めるとき」に該当する可能性があるためです。
1人で自首をすることに不安がある場合は、弁護士が自首に付き添うこともできます。
被害者と示談する
被害者と示談を成立させることで、逮捕を回避できる可能性があります。
示談とは、加害者が被害者に謝罪して示談金を支払い、被害者から宥恕(許し)を受けることです。
本来、示談は民事の世界(損害賠償請求など)の話であり、刑事の世界(逮捕や有罪・無罪など)には関係がないはずです。
しかし、実際は示談が成立していることによって逮捕を回避できたり、逮捕されていても不起訴となって早期に釈放されたりする可能性が高くなります。
そのため、路上痴漢事件を起こしてしまったら、まずは被害者との示談成立を目指すこととなります。
弁護士へ依頼する
弁護士へ依頼することで、逮捕を回避できる可能性があります。
なぜなら、弁護士から逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを捜査機関に対して説明してもらうことが可能となるためです。
路上痴漢で逮捕された場合の流れ
路上痴漢で逮捕された場合、その後はどのような流れになるのでしょうか?
ここでは、一般的な流れについて解説します。
なお、逮捕後の流れは、現行犯逮捕である場合と後日逮捕である場合で特に違いはありません。
逮捕される
路上痴漢事件を起こした場合、必要に応じて逮捕されます。
逮捕されると警察の留置施設(留置所)で、最大48時間身柄が拘束されます。
送致される
逮捕後は警察による捜査がなされ、48時間以内に送致されます。
送致とは、検察に身柄が送られることです。
検察に身柄が送られると、原則として検察の留置施設(拘置所)で最大24時間身柄が拘束されます。
なお、送致後は、拘置所へ移送されることもありますが、そのまま警察管理下の留置所で拘束されることもあります。
検察で勾留される
送致後24時間以内に、引き続き身柄を拘束する「勾留」が請求されるか、留置施設から出られる釈放がされるかが決定されます。
勾留が決まると、まずは最大10日間身柄が拘束され、その間にも事件の捜査が進みます。
必要に応じて勾留が延長される
勾留期間は、検察が裁判所の許可を得ることによって最大10日間延長されます。
この延長が決まると、逮捕から最大23日間(警察:2日+検察:1日+勾留:10日間+延長後の勾留:10日間)身柄の拘束が続くこととなります。
身体拘束されている期間は、会社に出勤できないことはもちろん、弁護士以外に外部と連絡を取ることは制限されます切できません。
そのため、勾留期間が長くなるほど社会生活に与える影響が大きくなります。
起訴・不起訴が決まる
捜査が終わると、起訴か不起訴かが決まります。
起訴とは、刑事裁判にかけることです。
一方、不起訴とは刑事裁判にかけないことです。
不起訴となった場合は釈放され、この事件は終結します。
刑事裁判が開かれ刑が確定する
起訴された場合は刑事裁判が開かれ、有罪・無罪や量刑が決まります。
日本では、起訴されると99%以上の確率で有罪になるといわれています。
たとえ有罪となった場合でも、執行猶予が付く可能性はあります。
執行猶予とは、問題を起こすことなく一定の期間が経過することで刑の言い渡しの効果がなくなる制度です。
有罪となっても執行猶予が付いた場合は釈放され、問題を起こさない限りは通常の社会生活を送ることが可能となります。
そのため、路上痴漢事件で起訴されてしまったら、執行猶予付きの判決を目指すこととなります。
路上痴漢をした際に弁護士へ依頼するメリット
路上痴漢事件を起こしてしまったら、早期に弁護士へコンタクトをとり、依頼するようにしてください。
弁護士へ依頼する主なメリットは次のとおりです。
逮捕を回避できる可能性が高くなる
弁護士へ依頼することで、弁護士から捜査機関に対し逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを説明してもらうことが可能となります。
その結果、逮捕を回避できる可能性が高くなります。
被害者との示談により不起訴処分となる可能性が高くなる
路上痴漢で逮捕や起訴を回避するには、先ほど解説したように、被害者との示談が成立することがポイントです。
しかし、自分で被害者との示談を成立させることは容易ではありません。
路上痴漢をして示談の成立を目指す場合は、性犯罪トラブルに詳しい弁護士へ早期にご相談ください。
自分で示談交渉をまとめることが難しい主な理由は次のとおりです。
逮捕されると物理的に直接の示談交渉ができないから
加害者が逮捕されると、スマートフォンなどは使えなくなりますし、弁護士以外に外部の者と連絡を取ることは制限されます。
そのため、被害者と直接示談交渉をすることが物理的に不可能であり、弁護士に交渉を代理してもらう必要があります。
示談交渉を始められない可能性が高いから
路上痴漢事件の場合、一般的に加害者は被害者の連絡先を知りません。
示談交渉をする場合、捜査機関を経由して被害者に連絡先を教えてよいか確認してもらい、本人の承諾が得られた場合に連絡先が開示されます。
しかし、事件の性質上、被害者は加害者に連絡先や氏名を知られたくないと考えることがほとんどです。
そのため、自分で示談交渉をしようにも連絡先の開示を受けられる見込みはほとんどなく、示談交渉の土俵に上がることさえできません。
一方、弁護士を経由して連絡先を聞いた場合は、加害者に連絡先の情報を開示しない条件付きで開示の承諾を受けられることが多く、示談交渉を始めやすくなります。
さらなるトラブルの原因となる可能性があるから
示談では、加害者から被害者にまとまった金銭を支払うこととなります。
示談金は示談書への署名と引き換えに支払うことが多く、「これ以上の債権債務はないことを確認する」旨の文言を入れることが一般的です。
しかし、自分で示談交渉する場合は、事件の直後で冷静な判断ができないことも多く、相手の言い値で合意してしまったり、示談書を取り交わさないまま金銭を交付して後日再度示談金の請求をされてしまったりなど、トラブルの原因となる可能性があります。
弁護士が代理して示談をまとめる場合は、示談書の用意などを抜かりなく行うため、このようなリスクを避けることが可能となります。
まとめ
路上痴漢とは、路上で行う痴漢です。
路上痴漢は都道府県の迷惑防止条例違反や不同意わいせつ罪に該当する可能性が高く、発覚すれば逮捕がなされ前科が付く可能性があります。
万が一路上痴漢をしてしまった場合や路上痴漢を疑われている場合は、早期に弁護士へご相談ください。
弁護士へ相談することで逮捕を回避できる可能性が生じるほか、被害者との示談をまとめ不起訴となる可能性も高くなるためです。
Authense法律事務所には、路上痴漢など性犯罪トラブルに詳しい弁護士が多数在籍しており、多くの事件で示談交渉をまとめた実績があります。
路上痴漢にまつわるトラブルでお困りの際には、Authense法律事務所まで早期にご相談ください。
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