リーガルエッセイ
公開 2022.02.01

成年年齢引き下げについて、きちんと理解できていますか?

成年年齢引き下げについて、きちんと理解できていますか?
記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、刑事分野の責任者として指導にあたる。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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成年年齢引き下げ

年が明けたころだったと思いますが、たまたまつけていたテレビから「大人になるの、ひよってるやついる?」っていう言葉が聞こえて、思わず画面を見てしまいました。
4月からの成年年齢引き下げに関する政府広報に、東京リベンジャーズのキャラクターたちが起用されたようですね(ちなみに、わたしはドラケンくんが好きです)。

今年になって、急に、成年年齢引き下げに関する新聞記事が増えたように感じます。
先日、17歳の子と話す機会があったのですが、そのとき、「成年年齢引き下げって聞いて、何のことかわかる?」と聞いたら、「ああ、18歳で投票できることになったやつでしょ?」という答えが返ってきました。
実は、大人でも、同じような認識のかた、いるようなんです。

わたしは、弁護士として、トラブルの解決に関わる仕事をすることが多いです。
そこが大事な仕事であることは間違いないのですが、もし、将来起きうるトラブルを未然に防ぐことができれば、それが何よりだと思っています。
そして、わたしは、成年年齢引き下げに伴い、どんなことが起きるのか、ということを、これから成年を迎えるかたたちがしっかりと学ぶことは、間違いなく、将来起きうるトラブルを未然に防ぐことにつながると確信しています。
それなのに、実際には、知るべきことが知られていないと感じることに大きな焦りを感じます。

これから、少しずつ、成年年齢引き下げについて取り上げてお話ししていきたいと思います。

スタートの今回は、最初に紹介した、17歳の子との間のやりとりで聞いたような、よくある誤解について簡単にお話ししますね。

18歳になったら選挙で投票することができるということと、今回の成年年齢引き下げとは、実は違うお話です。
投票することができる年齢に関しては、すでに、2016年の時点で、18歳に引き下げられています。
これは、4月からの成年年齢引き下げの話ではなく、公職選挙法という法律の改正に基づく結果です。
つまり、公職選挙法では、選挙のルールが定められていて、その中に、選挙権を持つのが何歳からか、ということも定められているのですが、この点がすでに6年前に引き下げられていたのです。

今回の成年年齢引き下げは、民法という法律の話です。
民法というのは、私人間の権利義務を規律する法律であるなどと言われますが、誤解をおそれずに言うと、要は、「わたしたちの日常生活で生じうるあれこれに関するルール」といえるかもしれません。
具体的には、たとえば、
「人から物を買う約束をしたのだけど、相手が約束どおりに物を渡してくれないのだけど、どうすればいいの?」
「人から殴られてひどい目にあった。この精神的な苦痛についてどうにか相手に責任を取らせる方法はあるの?」
「人からお金を借りていたけど、もう、何十年も前のこと。今さら返してくれって言われたのだけど、これって返さなくてはいけないの?」
そんな「あれこれ」について、どんなルールがあるのかということが書いてあるのが民法です。

この民法に、「年齢20歳をもって、成年とする」という条文があるんです。
ここが「20歳」でなくて「18歳」になる。
それが4月の成年年齢引き下げです。

では、民法で、これまで20歳とされていた成年年齢が18歳に引き下げられることで具体的にどんなところに影響が出てくるの?具体的にどんなトラブルが起きそう?そんなところを少しずつ取り上げていきますね。

未成年の皆さんにも、未成年のかたをお子さんに持つかたにも、学校関係者のかたにもぜひお読みいただけたらうれしいです!

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