リーガルエッセイ
公開 2020.12.04 更新 2021.07.18

コロナと偽計業務妨害罪

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、刑事分野の責任者として指導にあたる。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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コロナに感染 なのに温泉施設を利用して逮捕

少し前になりますが、新型コロナウイルスに感染して肺炎症状がある状態の男性が、入院していた病院を無断で抜け出し、温泉施設を利用したという報道を見ました。
そして、このたび、この男性が逮捕されたと報じられました。
被疑事実は、コロナ感染を隠して温泉施設を利用したことにより施設の営業を妨害するなどしたとして偽計業務妨害罪。
偽計業務妨害罪は、実際に具体的業務を妨害したという事実がなくても、業務を妨害する危険性のある行為があったと認められる場合に成立し得ます。
コロナに感染した男性が温泉施設に入ったとなれば、職員が消毒などの対応を余儀なくされたり、その日に温泉施設を利用したほかのお客様を特定して濃厚接触の可能性を指摘したり等の対応を余儀なくされたりするでしょうから、業務を妨害する危険性のある行為であるといえそうです。

報道によれば、男性は、「入浴施設ではシャワーを浴びただけ。浴槽にはつかっていない」と供述しているとのこと。
この供述は、偽計業務妨害罪の成立を否認しているのか?と思うかたもいるかもしれません。
男性がどのような意図でこのような供述をしているのかはわかりませんが、犯罪の成立自体を否認するという意図ではないのだろうなとは想像します。
浴槽につからなかったら偽計業務妨害が成立しないのかというと、そうでないことは明らかだと思うからです。
すでにこの事件があったとされる7月下旬には、コロナの感染力の強さについてはみなある程度知識を得ていたのではないでしょうか?
換気がよくなく、人が密集する可能性がある場所は感染リスクが高いとして、温泉や浴場の脱衣所においては感染のリスクがあるという報道を私も何度も見たことがあります。
そんな中、たとえ浴槽に入らなかったとしても、温泉施設に行き、脱衣所で着替え、シャワーを浴びることで、自身の接触した場所を後に触れた人において感染リスクがあるだろうということは容易に想像できたのではないかと思うのです。

これ以外にも、少し前になりますが、店で、本当はコロナ感染の事実はないのに「俺はコロナだ」などとうそを言って、信じた店に、客を誘導させたり、消毒させたりといった業務を行わせたという件が偽計業務妨害罪にあたるとして立件された事例もありましたね。
普段は、それほど多く耳にすることもないこの犯罪。
このコロナ下、コロナに関わる偽計業務妨害罪が複数立件されているなという印象です。
犯行に至る動機は個別の事例でさまざまでしょうが、この犯罪は、人の集まる店、施設等で、来て下さるお客様、そこで働く従業員らの感染リスクをなくすため懸命に感染対策をしながら業務にあたる方々に対し、その経営や心身に大きなダメージを与えかねない悪質なものだという見方があるのだと思います。
もっともだと思います。
本件についても刑事処分に注目していきます。

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