リーガルエッセイ
公開 2020.06.19 更新 2021.07.20

珈琲店のカップを持ち帰って逮捕

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、刑事分野の責任者として指導にあたる。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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先日、男性が、全国に店舗がある珈琲店のカップなどを盗んだという被疑事実で逮捕されたと報じられました。
その珈琲店、お店の椅子の座り心地がよくて、ついつい長居してしまう、私もお気に入りのお店です。

逮捕された男性は、お店で使われているロゴ入りのカップやおしぼりなど20点を自宅に保管していたそうで、犯行の動機について「コレクションにするため」と供述しているとのこと。
たしかに、使われているカップはちょっと特徴があって、すてきなものです。
でも、お店のカップは、あるお客さんが使い終わっても、それをお店が洗浄して何度も使い回すもので、お店は、お客さんが飲み終わったカップを持ち帰るなどということは承諾していませんし、そのことをだれもが知っていますよね。
そのようなカップを持ち帰ってしまえば、窃盗罪にあたります。

スティックシュガーやコーヒーフレッシュの持ち帰りはNG?

コーヒー店では、スティックシュガーやコーヒーフレッシュがまとめて置いてあり、そこから自分で持ってくる形式のお店がありますよね。
実は、先日、知人から、「あそこからスティックシュガーなどを大量に持ってきてしまって家に持ち帰ってきたらそれって犯罪になるの?」と聞かれたことがありました(知人の名誉のために申し上げると、その知人がそれをやっている、ということではありません)。
たしかに、「ご自由にお取りください」などと書いてあることもありますよね。
そうすると、「自由ってことは、いくつとってもいいということだ」と解釈されるかたももしかしたらいるかもしれません。
でも、置いてあるスティックシュガーなどは、客が注文したコーヒーなどに使う分としてお取りください、という意味で置いてあるものですよね。
注文したコーヒーなどとは関係なく別の用途で自宅で使う分についても自由に持って帰ってください、という意味ではないはずです。
ですから、やはり、置いてあるスティックシュガーなどを、自分が注文したコーヒーなどに使う分を明らかに超えて大量に持ち帰るような行為は窃盗にあたるといえます。
もっとも、難しいのは、このような解釈は、あくまでも解釈であって、そこに明確に書かれていない場合が多いこと、また、人により、「使う分」にも差があるだろうことです。
あいまいな部分があるのに、窃盗として立件することは事実上難しいだろうなとは思います。

お店に置いてあるスティックシュガーなどを大量に持ち去る人がいて困っているというお店のかたがいらしたら、窃盗で被害申告をするというよりは、そのような持ち去りを防ぐ方法を試してみたほうがよいと思います。
たとえば、スティックシュガーなどを店員さんの目に見えやすい場所に置き、大量に持ち去りにくいという気持ちになってもらうとか、また、「おひとり様2個まででお願いします」などと上限を設定するメモを貼り付けておくとか、それでも抑止できない場合には、そもそも自由に取ることができるという形式自体を見直してみるほうがよいかもしれませんね。

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