リーガルエッセイ
公開 2020.05.21 更新 2021.07.18

「置き配」をねらった窃盗被害の増加

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、刑事分野の責任者として指導にあたる。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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「置き配」という言葉、ご存じですか?

「置き配」とは、宅配業者が、玄関脇など指定された場所に荷物を置いて引き渡しを完了させるサービスのことをいいます。

経済産業省と国土交通省の発表によれば、ネット通販など電子商取引の件数はこの5年間で6割以上も増加したとのこと。
たしかに、私自身も、昔は、実際に物を見ずして買物をすることに抵抗があったのに、最近では、いろいろな人の口コミも見ながら効率よく買い物ができるネット通販を多く利用しています。

それに伴い、必ずしも受け取る側が在宅しておらず、宅配ボックスなど備えていない場合は、宅配業者がいったん荷物を持ち帰り、再配達をしなければならない、その負担が大きく、人員不足の問題が認識されるようになっていますよね。
このような中で、この問題の解決策のひとつとして出てきたのが「置き配」という配達方法です。

「置き配」をねらった窃盗被害の増加

経済産業省等は、宅配事業とEC事業の生産性を向上させるため、荷物の多様な受け取り方を推進すべく、「置き配」の課題や対応策を検討するため、宅配事業者、EC事業者、関係各省庁とで継続的な勉強会を実施しているとのこと。
その中でも、大きな課題のひとつとして検討されていたのが、「置き配」による窃盗被害の増加です。

特に、今、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、長引く自粛生活の中で、「外出しないで物を購入したい」「在宅しているけど、宅配業者のかたと接触せずに物を受け取りたい」という需要もありますよね。
これまで以上にいろいろな物が「置き配」されているであろう状況により犯行機会が作られてしまったといえるでしょう。

実際、先日、団地の玄関前に置かれていた荷物を盗んだという窃盗の被疑事実で逮捕された被疑者が、「この時期に行けば金目の物があると思った」と犯行の動機について供述していると報じられていました。

配達完了の連絡が来たにも関わらず、荷物が届いていないなどという場合は、速やかに警察に被害申告されるとよいでしょう。
また、「置き配」に乗じた窃盗被害に関しては、宅配業者による再送や返金の補償、保険、予防のためのグッズなどもあるらしいので、この機会にいろいろ調べてみると安心ですね。

「置き配」とマンションなどのの共有部分 その他の問題点も

置き配には、ほかにも考えなければならない問題がありそうです。

マンションなどの共同住宅では、「置き配」の指定場所として玄関脇のスペースを指定することが多いと思うのですが、そもそも、共同住宅の廊下に物を置いていいのか?という問題もありますよね。

多くのマンションの管理規約や使用細則には、共用部分である廊下には私物を置いてはいけないと定められていると思います。
管理規約等だけでなく、消防法や自治体の火災予防条例との関係でも、避難通路にもなる廊下に、その妨害になるような物を置いてはいけないという要請もあります。

この点、厚生労働省等による発表を見ると、「共用部分に、宅配物、生協配送、牛乳配達など避難の支障とならない少量または小規模の私物を暫定的に置く場合は、長期放置や大量・乱雑な放置等を除いて法的問題はならない」旨の記載がありますが、トラブルを避けるためにも、マンションの管理会社などにあらかじめ確認してみるとよいかもしれませんね。

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