リーガルエッセイ
公開 2020.04.15 更新 2021.07.18

新型コロナウイルスに便乗した詐欺に注意

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、刑事分野の責任者として指導にあたる。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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新型コロナウイルスに便乗した詐欺が発生

先日、大阪府内で80代男性のもとに、息子を名乗る男から「会社が倒産したから金を貸して」などと電話が入り、弁護士を名乗る男に800万円を手渡したところ、詐欺だったという事件が発生したと報じられました。

また、同様に、大阪府内で60代女性のもとに、市役所職員を名乗る男から「還付金がある」「市役所はコロナで忙しい」などと電話が入り、誘導されたATMで100万円を振り込んだところ、詐欺だったという事件が発生したとも報じられました。

たまたまこの2つの事件は大阪府内で発生したものですが、実は、このような、新型コロナウイルスに便乗した詐欺事件が全国で増えているのです。

消費生活センターへの相談急増中

各都道府県、市区町村には、消費生活センターが設置されています。
消費生活センターというのは、消費生活全般に関する苦情や問い合わせなど、消費者からの相談を専門の相談員が受け付けている機関です。
消費生活センターの発表によると、新型コロナウイルスを口実にした事例に関する相談が消費生活センターの相談窓口に寄せられているというのです。

消費生活センターがホームページで紹介している事例を一部とりあげると、

  • ・突然自宅を訪ねてきた業者から、「新型コロナウイルスの影響で金の相場があがるから金を買う権利を買わないか」と言われた
  • ・スマホに、不審なマスク販売広告が届いた
  • ・水道管や下水管に新型コロナウイルスがついているから除去する必要があるとの電話やSMSがあった
  • ・息子を名乗る男から、上司にお金を借りたと言われ、その後、上司を名乗る男から、息子にお金を貸したが、新型コロナウイルスの影響ですぐに返済してもらう必要が生じたと言われて100万円を手渡した

など、「新型コロナウイルス」に便乗したものが複数存在します。

その時々の広く報道されているニュースに便乗する詐欺は、今回に限って発生しているわけではありません。
マイナンバー制度が導入されたときには、これに便乗して、市役所職員を名乗りマイナンバーカード発行手数料名目でお金をだましとる詐欺事件などが発生しました。
年金個人情報流出が報じられたときには、これに便乗して、流出した情報を消すために必要であるとしてキャッシュカードの交付と暗証番号を求めて、現金が引き出されてしまう事件などが発生しました。
災害が発生したときは、これに便乗して架空の募金名目でお金をだましとる詐欺事件などが発生しました。

詐欺をする者にとって、うその話を、あたかも本当であるかのように相手に信じ込ませることが出発点になります。
そして、うその話に、そのときどきに広く報道されている時事ニュースを織り交ぜると、一気にその話が具体的で信ぴょう性を増して受け止められる傾向があるので、こうした便乗詐欺が多く発生するのでしょう。

また、今回の新型コロナウイルスに便乗した詐欺についていえば、いま、まだ収束の兆しも見えないことによる不安な心理状態や、外出自粛となり、周りの人と簡単に接触できず内にこもりがちな状態で自分で何とかしなくてはという心理状態につけこんでいるともいえそうです。

消費生活センター、警察に相談を

詐欺の犯人にお金がいったんわたってしまうと、その犯人をつきとめて刑事的に制裁を加えるという手続きはあり得ても、お金が戻ってくるということはなかなか難しいといえます。
ですので、詐欺の犯人から連絡があった時点で、これは詐欺ではないかと疑うことが大事です。

しかし、詐欺の犯人は、疑われないように巧妙な語り口で近づいてきます。
それを見破るのは並大抵のことではないかもしれません。
そこで、まず必要なのは、ちょっとイレギュラーな連絡が入ったときときに、「こんな連絡が入った」と普段から気軽に周囲に言う習慣をつけることだと思います。
自分自身で、あやしい・あやしくないの判断をすることはなかなか難しくても、家族やご近所のかたに話したとき、相手が、「それっておかしくない?」と反応してくれる可能性があり、詐欺に気付くきっかけになるはずです。

もうひとつ、有効だと思うのは、ホームページで、消費生活センターに寄せられた相談事例を常にチェックしておくことです。
ホームページ上で、いつごろ、どのような手段で(電話、SMS、広告など)、どのような内容の不審な連絡が入ったかということが詳しく紹介されています。
そしてそれらを踏まえて、どんなことに気をつければよいかということのアドバイスも掲載されています。
全国的に、今、どのような手口の詐欺が行われているかという事例を把握しておくことで、いざ自分のもとにも同じような接触があったときに、「これはおかしい」とセンサーが働くようになります。

そして、もし、「これは本当かな?」と思ったら、家族や周囲のかたに相談したり、各都道府県、市区町村に設置された消費生活センターに相談してみることをお勧めします。

さらに、うそだと気づくきっかけを得られないままにお金をだまし取られてしまった場合には、消費生活センターに相談して助言をもらい、詐欺の可能性が高いとなれば、警察に被害を申告して捜査を進めてもらうのがよいでしょう。

どのような犯罪であってももちろん許されるべきものなどないのですが、便乗詐欺は、不安定な社会の情勢や被害者の不安な心理状態につけこむ極めて卑劣な犯罪です。
そのような卑劣な犯罪に手を染める者に、将来のために大事に貯めてきたお金を奪われることなど絶対にないように、まずは、今、どんな便乗詐欺が横行しているか、という情報収集からしてみることをお勧めします。

万一、被害に遭い、どう動いていいのかわからないという方は、弁護士にもお気軽にご相談ください。

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