リーガルエッセイ
公開 2020.04.01 更新 2021.07.18

新型コロナウイルスを理由に自宅待機を命じられた。給与は支払われる?

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、刑事分野の責任者として指導にあたる。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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先日、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、4月入社予定の内定者について内定取り消しを行うことの法的な問題について取り上げました。

今回は、内定を取り消されることはなかったけれど、入社後、「コロナの影響で業務を縮小している。しばらくやってもらう仕事がないから自宅で待機していてください」と言われて自宅待機を命じられたというケースを想定してお話しします。

会社から自宅待機命令。働いていないと給与はもらえない?!

ここでの自宅待機とは、在宅勤務とは違います。
家にいて、すべき仕事もないという状態です。

このような会社の指示に従って、出社を控え、自宅で待機することとなったら、その期間、給与は支払われると思いますか?
会社が、自宅待機の間、給与を支払ってこない場合、これは当然のこととして受け入れなくてはいけないのでしょうか?

給与は、働いたことの対価です。
ですから、働いていない以上は、対価としてもらえるものはないだろうと思う方もいらっしゃるかもしれません。

でも、必ずしもそうではありません。

自宅待機でも「休業手当」は支払われる?!

労働基準法には、「使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払われなければならない」と定められています。

使用者は、使用者都合で従業員を休ませる場合、平均賃金の6割以上を休業手当として払わなければならないということです。逆に、不可抗力といえる場合には休業手当の支払は不要となります。

そうなると、「使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合」というのが具体的にどのような場合を指すのかが問題になってきます。

この点、新型コロナウイルスの影響でやれる仕事がないから自宅待機、というだけでは不十分で、休業手当が支払われるべき可能性が高いといえます。

「新型コロナウイルスの影響」というのは、具体的に、どのようなことか、業務への影響を最小限にするためにどのよう努力をしてきたか、仮に、何らかの影響があったとして、たとえば、社員を在宅勤務にして従事できる仕事がないか検討したか、など様々な事情を考慮して、それでもどうにもならない、という場合に初めて「使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合」に該当しないといえるでしょう。

4月入社の新入社員への自宅待機命令も、一人で悩まず相談を

4月に入社されたばかりの新入社員のかたが、会社からこのような自宅待機を命じられ、さらに、その間、休業手当の支払もない、という場合、入社早々、会社に手当の支払いのことを尋ねたりすることもできず、何も言えないままに従わざるを得ないという気持ちになることもあるかもしれません。

でも、当然のことですが、毎日の生活には、これまでと変わらずお金がかかりますし、いつまで続くからわからない自宅待機は精神的にもとても苦しいものだと思います。

厚生労働省のホームページには、「新型コロナ感染症の影響による特別労働相談窓口」を開設したとのアナウンスとともに、相談窓口やその連絡先の案内も記載されています。

不安を解消するためにも、適切な対応をとるためにも、このような相談窓口や弁護士などに早めに相談されることをお勧めします。

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