リーガルエッセイ
公開 2022.06.29

「国際ロマンス詐欺」について

「国際ロマンス詐欺」について
記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、刑事分野の責任者として指導にあたる。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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意外と知られていない国際ロマンス詐欺

皆さんは、SNSを利用していますか?
利用しているかたであれば、一度は経験したことがあるのではないかと思います。
外国のお名前と思しきアカウントからの友達申請やメッセージ。
写真を投稿している場合は、その写真に対するコメントから始まることも多いように思います。
いろいろなパターンがあるのだとは思いますが、共通するのは、歯の浮くような賛辞から始まるということ。

私も、そのようなメッセージをもらうことが多いです。
そんなとき、基本的には、無視していますが、たまたま時間を持て余していた休日、リサーチと称して、初めて返信をしてみたことがあるのです。

最初に来たメッセージは、「こんにちは。すばらしいあなたの存在にわたしはうれしく思います。とても美しいあなたはこの世界で幸せになる権利があります」みたいなものでした。

それに対して、私は、「ありがとう。参考までに聴かせてください。私のどんなところがすばらしいでしょうか?」と返信しました。

すると、「世界のすべてなのです。あなたのすべてがなによりもすばらしく、そのことが私を世界で一番幸せな気持ちにさせます。もしかして、あなたは知らなかったでしょうか。」などという即レスがありました。

その時点で、なんだか面倒になってしまい、「知りませんでした。教えてくれてありがとう」と送って放置していたところ、「その幸せになる権利を使って、わたしと幸せになりませんか?世界が喜ぶことです」という返信が届いていました。

私の貴重な時間を、たとえ一瞬であっても不毛なことに使ってしまったことを後悔してブロックしました。

後日、知人に、このエピソードを伝え、「いやあ、最近、こういったメッセージが多いね。これぞ国際ロマンス詐欺の入り口なんだよね」と話したところ、「国際ロマンス詐欺とはなんのことか?それは、もしかしたら、本当に稀有なロマンスの入り口だったのではないか?その稀有な機会をお前は逃してしまったのではないか?」と言われて、少し驚きました。

その話をしてから何人かに聞いたのですが、この国際ロマンス詐欺が何たるかを全く知らないという人も意外と存在していたことがわかりました。

詐欺集団は、こちらに「おかしいな」という違和感を感じさせないような近づき方をしてくるのが通常です。
だから、自分の勘に頼って防ごうとしてもそれは危ういことなのです。
何よりも大事なことは、具体的な事例として、こういう詐欺の手口があるということを知ることです。

先日、ある男性が、SNSで知り合った外国人女性を名乗る女性に、FXの投資話を持ち掛けられ、合計1億5400万円ものお金をだまし取られたとの報道がありました。

国際ロマンス詐欺というのは、このように、

  1. 自分が海外の男性または女性であると名乗るものであること
  2. 恋愛や結婚、または、おいしい投資に関する話があること
  3. 最終的にさまざまな名目でお金の振り込みを求められること

に特徴があると思います。

このようなSNSをきっかけとした投資詐欺に関し、国民生活センターに寄せられた被害相談がここ2年近くで30倍になっているそうなのです。

コロナ禍で、孤独を感じやすくなっている心理につけこむという要素や、感染予防のために海外との交流が断たれており、なかなか会えないという説明が不自然にならないという要素が潜むなど、新型コロナウイルス感染拡大との密接な関係があるようです。

また、海外の人間であると名乗ることにより、普通であれば奇想天外な作り話と聞こえてしまいそうなところに、「まあ、海外ではそんなこともあるのかな」と違和感を打ち消す作用が働いてしまい、うそを疑いにくいという背景もあるように思います。

そして、この種の詐欺は、そもそも相手がどこのだれか特定できないことも多いし、振込先である不正に開設された口座から海外送金されるなどして追跡が難しくなることも。

なによりも、被害を未然に防ぐことが大事です。
そのためには、敵の具体的な手口をしること。
国民生活センターのホームページや報道には、どのような文言でだまされたかなどという情報が具体的に記載されています。
それを見るひと手間が被害を防ぐ大きな一歩になることを多くのかたに知っていただきたいと思います。

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