コラム
公開 2022.11.16 更新 2023.03.01

複数5_新規_誹謗中傷の基準はどこから?訴えられる・開示請求ができるラインを弁護士が解説

近年、インターネット上での誹謗中傷が社会問題となっています。
インターネットの普及にともない、皆さんにとって、いつ誹謗中傷がなされても不思議ではないほどです。

発信力の高い方ですとなおさらかもしれません。

仮に誹謗中傷をされてしまったら、加害者に対して損害賠償請求などの法的措置がとれる可能性があります。
では、どの程度の誹謗中傷であれば、法的措置がとれるのでしょうか?

実は、どのような表現であれば名誉毀損などに該当するのかどうか、その表現のみで端的に判断できるわけではありません。
そこで今回は、法律上どこからが誹謗中傷に該当するのかという疑問にお答えするとともに、自分の受けた誹謗中傷で相手を訴えられるかどうか迷った場合の対応方法などについて弁護士がくわしく解説します。

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誹謗中傷への法的対応方法

インターネット上などで誹謗中傷を受けた場合、とることのできる法的手段にはどのようなものがあるのでしょうか?

はじめに、誹謗中傷に対してとり得る法的対応方法を紹介します。

書き込みの削除請求

1つ目の対応方法は、書き込みの削除請求です。

※削除請求も民事上の請求にはなりますが、誹謗中傷への対応として最初に検討されることが多いと思われることから、本コラムでは切り出して1項目として紹介しています。

自分に対して誤解を招くようなことや虚偽のこと、暴言など、自分を誹謗中傷する内容が書かれていれば、削除してほしいと感じることでしょう。
しかし、削除請求をする際には、次の3点に注意をしなければなりません。

書き込んだ本人に削除要請をすることは避ける

自分を誹謗中傷する内容を書いた相手に、直接削除要請をすることは避けた方がよいでしょう。
水掛け論となるなど相手がヒートアップしてしまい、さらなる誹謗中傷の原因となりかねないためです。
また、自分が言い返した内容によっては、後に損害賠償請求をする際などに不利となる可能性もあります。

必ずしも削除してもらえるわけではない

SNSなどの管理者(例:Twitterの場合Twitter社)などに削除要請をしたとしても、あくまでも削除を要請しているにすぎず、裁判所の判決などに基づくものではないため、必ずしも削除に応じてもらえるわけではありません。

削除されれば他の法的対応が困難となる

自分を誹謗中傷する内容の投稿は、損害賠償請求や刑事告訴の際の証拠となります。
そのため、その誹謗中傷に対して損害賠償請求や刑事告訴を検討している場合には、焦って削除請求をすることはおすすめできません。
必ず、事前に弁護士などの専門家にご相談いただいたうえで、対応することが推奨されます。

刑事上の責任を追求する

誹謗中傷への対応方法の2つ目は、相手に対して刑事上の責任を追求することです。

ただし、「誹謗中傷」という罪名の犯罪があるわけではないため、誹謗中傷がただちに刑事罰の対象となるわけではありません。
誹謗中傷の内容を個別に判断し、それが刑法上の「侮辱罪」や「名誉毀損罪」、「脅迫罪」などに該当すれば、刑事罰の対象となる可能性があります。

刑事告訴を検討したい場合には、弁護士へご相談ください。

民事上の責任を追求する

誹謗中傷への対応方法の3つ目であり、もっともスタンダードな方法は、いわゆるプロバイダ責任制限法(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)に基づき、発信者の情報の開示を求める手続きを行ったうえで(以下総称してわかりやすく「発信者情報開示請求」といいます。)、加害者に損害賠償請求をし、民事上の責任を追求することです。
※先に述べたとおり、削除請求も民事上の請求になりますが、切り出して1項目としたため本項では記載いたしません。

「損害賠償請求」とは、誹謗中傷を受けた側が被った財産上や精神上の損害を、金銭で賠償してもらう請求です。
損害賠償請求が認められれば、相手から金銭で賠償を受けることが可能となります。

その前提として、投稿などにかかる情報や加害者の情報を開示するよう、SNSや掲示板の管理者などやプロバイダへ請求する「発信者情報開示請求」を行うことがほとんどです。
こちらは民事の問題であり、損害賠償請求などが認められるかどうかの基準は、刑事罰の対象となるかどうかの基準と同じではありません。
また、損害賠償請求が認められたからといって、相手に前科が付くわけではありません。
刑事と民事を混同しないよう注意しましょう。

「誹謗中傷」とは

素材_天秤_小槌
法律上、どのような場合に、誹謗中傷に対して法的責任が追及できるのでしょうか?
順を追って解説していきましょう。

誹謗中傷は法律用語ではない

「誹謗中傷」は、法律用語ではありません。

すなわち、たとえば刑法で「誹謗中傷をしたら〇〇の刑に処する」と書かれているわけでもなければ、民法で「誹謗中傷をしたら損害賠償請求責任を負う」などと書かれているわけでもないのです。
誹謗中傷を受けたかどうかと、相手を刑事罰に問えるかどうか、そして相手に対して損害賠償請求が認められるかどうかは、それぞれ異なる基準で判断されます。

誹謗中傷が刑事罰の対象となる基準

誹謗中傷が該当する可能性のある罪には、次のものなどが存在します。

名誉毀損罪

公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損する行為は、名誉毀損罪に該当します。

たとえば、「〇氏は裏口入学をしている」や「〇氏は会社の金を横領している」などと書きこむことなどは、これに該当する可能性があります。

なお、ここでいう「事実」とは、「本当のこと」という意味ではありません。
つまり、〇氏が実際には裏口入学や横領をしていなかったとしても、名誉毀損罪が成立し得るということです。

侮辱罪

事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱する行為は、侮辱罪に該当します。

たとえば、「〇氏はブスだ」や「〇氏がキモいから消えてほしい」などと書き込むことは、これに該当する可能性が高いでしょう。

脅迫罪

本人や親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫する行為は、脅迫罪に該当します。

たとえば、「今からお前を殺しに行く」や「あんたの息子を誘拐してやる」などと書き込む行為は、場合によっては、これに該当する可能性が高いでしょう。

誹謗中傷が開示請求や損害賠償請求の対象となる基準

誹謗中傷に対して、情報開示請求や損害賠償請求など民事上の責任追及が認められる基準は、先ほど紹介した刑事罰に該当するかどうかの基準とは異なります。
誹謗中傷に対して民事上の責任追及が認められるのは、誹謗中傷が次のいずれかに該当する場合です。

名誉の毀損

名誉の毀損は、事実を指摘することで、その人の社会的評価(名誉)を低下させることです。
こちらは、先ほど解説した刑法上の名誉棄損と近いでしょう。

名誉感情の毀損

名誉感情の侵害は、その人の名誉感情(自尊心や、自分自身に感じている価値)を傷付けることです。

ただし、どのような場合でも「傷ついた」と主張しさえすれば、損害賠償請求が認められるわけではありません。

裁判では、社会通念上許される限度を超えた侮辱発言であったかどうかなどで判断されることとなります。
詳しくは弁護士にお尋ねください。

誹謗中傷に法的責任を追求できる基準はある?

先ほど解説したように、誹謗中傷に法的責任を追求できるかどうかの判断基準は、刑事上と民事上でそれぞれ異なっています。
しかし、いずれにおいても、言葉の表現のみで画一的に決まるわけではないことを知っておきましょう。

後ほど侮辱罪が成立した事例を紹介しますが、このような発言や投稿をしたら必ず法的責任が追及できるというわけではありません。
実際には、発言や投稿の内容、発言や投稿の経緯など諸般の事情に鑑みて、総合的に判断されることとなります。

誹謗中傷が侮辱罪に該当するとされた事例

誹謗中傷が侮辱罪に該当するとされた事例には、次のものがあります。※1
インターネット上での事例と、インターネット以外での事例とに分けて解説していきましょう。

なお、先ほどもお伝えしたように、これらと同じ発言をしたらかといって、必ずしも刑法上の罪に問えるというわけでも、損害賠償請求が認められるというわけでもありません。
そのため、あくまでも参考事例としてご確認ください。

インターネット上の書き込みが侮辱罪とされた事例

インターネット上での書き込みが侮辱罪とされた事例には、次のものなどが存在します。
なお、一部に性的な表現が含まれていますのでご注意ください。

  • SNSに「この子○○(地名)一番安い子!!お客様すぐホテル行ける!!最低!!」などと投稿するとともに、当該SNSにおける被害者のプロフィール画面を撮影した画像を掲載したもの
  • SNSの被害者に関する配信動画で「BM、ブタ」などと放言したもの
  • インターネットサイトの被害法人に関する口コミ掲示板に、「詐欺不動産」「対応が最悪の不動産屋。頭の悪い詐欺師みたいな人」などと掲載したもの

インターネット以外での言動が侮辱罪とされた事例

インターネット以外での言動が侮辱罪に認定された事例には、次のものなどが存在します。

  • 情報誌を発行する企業の代表取締役者が、誌面の下部に「ふしだらな○○(被害者名)」と記載した同人の顔写真を掲載し、約3,000部を書店などへ配布するなどして頒布したもの
  • 集合住宅において計3名に対し、被害者について「今、ほら、ちまたで流行りの発達障害。だから人とのコミュニケーションがちょっと出来ない」などと言ったもの
  • 駅の柱などに「ご注意 ○○(被害者名) 悪質リフォーム工事業者です」などと記載した紙片5枚を貼付したもの
  • 商業施設において、他の買い物客などがいる前で視覚障害者である被害者に対し、「おめえ、周りが見えんのんやったら、うろうろするな」などと大声で言ったもの

誹謗中傷に該当するかどうか迷った場合の対処方法

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自分がされた言動が法的対応のとれる誹謗中傷に該当するかどうか迷った場合には、どのような対応を取ればよいのでしょうか?
対応のポイントは、次のとおりです。

弁護士へ相談する

自身が受けた誹謗中傷に対して法的手段がとれるかどうか、自分のみで判断することは容易ではありません。
また、悩んでいる場合に時間が過ぎ、対応が難しくなってしまうリスクもあります。

そのため、自分が受けた誹謗中傷に法的対応がとれるかどうか悩んだら、早期に弁護士へご相談ください。
Authense法律事務所では、初回の60分は無料でご相談いただくことが可能です。

無理に自分で対応しない

誹謗中傷のような投稿に無理に自分のみで対応をすれば、状況が悪化するリスクがあります。
たとえば、相手に言い返せば損害賠償請求などで不利になるリスクがある他、誹謗中傷がエスカレートする危険性もあるでしょう。
そのため、無理に自分で対応することはおすすめできません。

できるだけ早期に対応する

誹謗中傷する投稿がなされたら、できるだけ早期に対応してください。

なぜならば、問題となっている投稿がされてから事件が経過してしまうと、SNSやプロバイダでのログ保存期間が過ぎ、投稿などにかかる情報や投稿者の情報が消えてしまう可能性が高くなるためです。
ログの保存期間はそのSNSやプロバイダによって異なりますが、おおむね3か月から6か月程度であることが多いと言われています。
また、ログ保存期間内であったとしても、法的措置を恐れた投稿者が自ら投稿を削除するなどして、証拠が消えてしまう可能性もあります。

そのため、法的措置がとれるかどうか迷うような投稿がなされたら当日や翌日など、できるだけ早期に弁護士へご相談いただくとよいでしょう。

まとめ

誹謗中傷にどこから法的措置がとれるのかについて、明確な線引きがあるわけではありません。

また、このような表現をしたら即座に損害賠償請求ができるということではなく、前後の状況などから総合的に判断がなされます。

誹謗中傷に対して法的措置をとるためには、早めの対応がカギとなります。

SNS上などで受けた誹謗中傷に対して法的措置がとれるかどうか迷う場合には、できるだけ早く弁護士へご相談いただくとよいでしょう。

Authense法律事務所では、誹謗中傷に関するご相談を、初回の60分無料でお受けしております。
誹謗中傷を受けてお困りの際には、ぜひAuthense法律事務所までご相談ください。

参考文献

※1 法制審議会刑事法(侮辱罪の法定刑関係)部会:第1回会議配布資料 侮辱罪の事例集

記事を監修した弁護士
authense
Authense法律事務所記事監修チーム
Authense法律事務所の弁護士が監修、法律問題や事例についてわかりやすく解説しています。Authense法律事務所は、「すべての依頼者に最良のサービスを」をミッションとして、ご依頼者の期待を超える弁護士サービスを追求いたします。どうぞお気軽にご相談ください。
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