VTuberへの誹謗中傷は年々増加傾向にあり、当事務所にも多くのご相談が寄せられています。
では、VTuberへの誹謗中傷であっても、法的措置をとることは可能なのでしょうか?
また、VTuberが誹謗中傷の被害に遭ったら、どのように対応すればよいのでしょうか?
今回は、VTuberへの誹謗中傷について、弁護士がくわしく解説します。
目次
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VTuberへの誹謗中傷は少なくない
VTuberとは「バーチャルYouTuber」の略称であり、自分の顔を出さずに2Dや3Dのアバターを使って活動しているYouTuberを指します。
ただし、最近ではYouTubeに限らず、17Liveなどさまざまな動画配信サービスへ活動の場が広がっています。
しかし、このVTuberに対して誹謗中傷がなされる事例が増えており、当事務所への相談も増加傾向です。
また、最近ではVTuberの「勇気ちひろ」さんが誹謗中傷の被害に遭い、発信者情報の開示請求が認められた事例も存在します。
この事例では、賠償金120万円という内容で、加害者との示談が成立しているようです。※1
VTuberへの誹謗中傷は少なくありませんが、VTuberへの誹謗中傷であっても法的措置の対象となることを知っておきましょう。
VTuberへの誹謗中傷と法的措置の考え方
誹謗中傷への法的措置としては、「名誉毀損罪」などで刑事告訴をする方法と、民事で損害賠償請求をする方法の2つが考えられます。
これらのうちいずれか一方のみの措置をとることも、双方の措置をとることも可能です。
では、被害者が生身の人物ではなくVTuberである場合、法的措置についてはどのように考えればよいのでしょうか?
順を追って解説していきましょう。
名誉毀損罪での刑事責任追及は難しい
一般的に、VTuberへの誹謗中傷に対して刑事責任を追及することは難しいとされています。
ただし、実際には具体的な事例によって異なりますので、まずは諦めずに弁護士へご相談ください。
では、順を追ってみていきましょう。
誹謗中傷が該当し得る罪
誹謗中傷は、刑法上の名誉毀損罪や侮辱罪などに該当する可能性があります。
それぞれの概要は次のとおりです。
- 名誉毀損罪:公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者が、その事実の有無にかかわらず該当する罪(刑法230条)
- 侮辱罪:事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者が該当する罪(同231条)
また、それぞれ、次の刑罰の対象となります。
- 名誉毀損罪:3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰
- 侮辱罪:1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料
なお、名誉毀損罪と侮辱罪の最大の違いは、「事実の摘示」の有無です。
たとえば、単に「〇田太郎はバカだ」という発言は何ら具体的な事実を摘示していません。
一方、「〇田太郎は違法薬物をやっている」という発言は、事実を摘示しているといえるでしょう。
なお、ここでいう「事実」とは本当のことという意味ではなく、実際に〇田太郎氏が違法薬物などをやっていなかったとしても、名誉毀損罪の成立要件である「事実の摘示」となり得ます。
名誉毀損罪の成立には「同定可能性」が必要
ある誹謗中傷が名誉毀損罪に該当するかどうかを検討する際に重要となるのが、「人の名誉を毀損」したかどうかです。
言い換えれば、「ある人の社会的信用を低下させた」ということです。
そして、これを判断する際には、「同定可能性」が必要であるとされています。
同定可能性とは、平たくいえば、その悪口が誰のことを指しているか、他者が見てわかるかどうかということです。
つまり、いくらひどい悪口を並べ立てたところで、見た人にとって誰のことであるのか本当に分からないのであれば、名誉毀損罪は成立しません。
なお、誤解の多いところですが、伏せ字やイニシャルにすればよいというものではありません。
伏せ字やイニシャルであっても、たとえば同じ会社の人が見れば誰のことであるのかわかる場合などには、同定可能性があると考えられます。
VTuberへの誹謗中傷は同定可能性があるか
VTuberへの誹謗中傷に対して刑事上の罪を問えるかどうかは、この同定可能性の有無がカギとなります。
まず、たとえばVTuberである「Aちゃん」を演じている人(いわゆる「中の人」)が「A川花子」氏であることが広く一般に知られているのであれば、「Aちゃん」への誹謗中傷はすなわち「A川花子」氏の社会的信用を低下させる可能性が高く、同定可能性があると判断できる場合も多いでしょう。
一方、大半のVTuberは、中の人が誰であるのか広く一般には知られていません。
そのため、VTuberへの誹謗中傷と中の人への誹謗中傷を、イコールで結びつけることは困難でしょう。
つまり、いくらVTuberである「Aちゃん」を誹謗中傷しても、中の人が「A川花子」氏であることが知られていなければ、「A川花子」氏の社会的信用を低下させることにはならないということです。
この場合には、VTuberへの誹謗中傷を理由に名誉毀損罪に問うことは困難です。
民事上の損害賠償責任は認められる可能性が高い
VTuberへの誹謗中傷に対して刑事上の罪に問うことが難しい場合であっても、民事上の損害賠償請求は認められる場合があります。
順を追って解説しましょう。
誹謗中傷への損害賠償請求とは
損害賠償請求とは、誹謗中傷によって被った損害を、金銭で賠償するよう請求することを指します。
まずは、相手に対して弁護士などを介して直接交渉することが多いでしょう。
相手が請求額どおりに支払ったり、多少減額をしてでも交渉がまとまったりすれば、これで解決となります。
なお、このように裁判外で交渉がまとまることを、「示談」といいます。
一方、交渉がまとまらなければ、裁判上での損害賠償請求へと移行します。
なお、インターネット上での誹謗中傷の場合、相手が匿名であり、誰であるのかわからないことも少なくありません。
この場合には、損害賠償請求をする前に、相手を特定することが必要です。
具体的には、裁判所へ申し立てを行い、裁判所からプロバイダなどに対して発信者情報開示命令を出してもらうことが多いでしょう。
VTuberへの誹謗中傷でも損害賠償請求は可能な場合が多い
刑事上の責任を問うための要件と、民事上の損害賠償請求が認められるための要件は、イコールではありません。
たとえば、誹謗中傷によって社会的信用が低下したとまではいえない場合であっても、本人の自尊心やプライド(「名誉感情」などといいます)が傷付いたのであれば、損害賠償請求が認められる傾向にあります。
先ほど解説したように、中の人が知られていないVTuberへの誹謗中傷は、中の人の社会的信用を低下させることにはなりません。
しかし、VTuberへの誹謗中傷によって中の人の名誉感情が傷付いたと判断されれば、損害賠償請求は認められる可能性があるということです。
VTuberが誹謗中傷の被害に遭った場合の対応方法
VTuberが誹謗中傷の被害に遭ったら、まずどのように対応すればよいのでしょうか?
誹謗中傷への対応は、初動が非常に重要となります。
まず行うべき対応方法は、次のとおりです。
スクリーンショットなどで証拠を残す
誹謗中傷をされたら、すぐにその誹謗中傷の書き込みなどのスクリーンショットを撮影し、証拠を残しましょう。
証拠がなければ、法定措置をとることが困難となるためです。
また、後でスクリーンショットを撮ろうと思って先延ばしにしてしまうと、相手が投稿を削除したり、第三者が運営に通報をしたりして投稿が消えてしまうかもしれません。
そのため、誹謗中傷をされたら、迷わずすぐにスクリーンショットを撮影することをおすすめします。
スクリーンショットで残しておくべき内容は、主に次のとおりです。
- 誹謗中傷をする投稿の内容
- 投稿の日時
- 投稿のURL
- SNSであれば、投稿をした人のユーザー名やアカウント名、プロフィールページ
なお、スクリーンショットの撮影は、画像ではなくPDFで行うことをおすすめします。
画像でのスクリーンショットの場合には、URLなどが正確に表示されない可能性が高いためです。
できるだけ早く弁護士へ相談する
スクリーンショットなどで誹謗中傷の証拠を残したら、できるだけすぐに弁護士へご相談ください。
誹謗中傷への対応を自分で行うことは困難であり、また自分で行おうとして対応が遅れてしまうと、法的措置がとれなくなってしまう可能性が高くなるためです。
誹謗中傷への法的措置はログが消える前に行う必要があり、時間との勝負であるといっても過言ではないでしょう。
そのため、被害に遭ったらできるだけ早く、できれば当日や翌日には弁護士へご相談ください。
なお、安易な思いから、有名な相手へ誹謗中傷をする人は、残念ながら後を絶ちません。
そのため、VTuberとして精力的に活動していくにあたっては、弁護士とのホットラインを確保するため、顧問契約を締結することなども検討するとよいでしょう。
VTuberが誹謗中傷の被害に遭った場合に避けること
VTuberが誹謗中傷の被害に遭った場合、対応を誤ると、法的措置が難しくなったり被害が拡大したりするおそれがあります。
そのため、次のような対応は避けた方がよいでしょう。
相手に直接言い返す
誹謗中傷をされた場合にもっとも避けるべきなのは、相手へ直接言い返すことです。
相手へ直接言い返すと、火に油を注いでしまい、誹謗中傷がエスカレートしたり、被害が拡大したりするおそれがあるためです。
また、言い返した内容によっては、法的措置をとるにあたって不利となる可能性もあるでしょう。
相手に対して直接反論をしたくなることもあるかと思いますが、弁護士としてはぐっと堪えることをおすすめします。
焦って削除請求をする
VTuberが誹謗中傷の被害に遭った場合、その内容によっては、すぐに消してほしいと考えることもあるでしょう。
しかし、焦って削除請求をすることはおすすめできません。
なぜなら、削除請求が認められて投稿が削除されてしまえば、法的措置をとる際に必要となる証拠が消えてしまうこととなるためです。
そのため、投稿の削除請求をする前に、必ずスクリーンショットなどでしっかりと誹謗中傷の証拠を残す必要があります。
また、可能であればスクリーンショットの撮影後すぐに削除請求をするのではなく、削除請求をしたい場合であっても、弁護士への相談を終えるまで待っていただくことをおすすめします。
なぜなら、自分で撮影したスクリーンショットが不十分であることもあり、弁護士が追加で撮影したい場合もあるためです。
相談時点ですでに投稿が消えてしまっていれば、追加で撮影することができません。
対応を諦める
VTuberへの誹謗中傷への法的措置では、実在の人物への誹謗中傷とは異なる論点の検討も必要となります。
また、VTuber自体の登場から日が浅く、判例の蓄積もありません。
そのため、法的措置をとることが難しいと考えて、諦めてしまう場合もあるでしょう。
しかし、対応を諦める必要はありません。
先ほど解説したように、VTuberへの誹謗中傷で損害賠償請求が認められる可能性は、十分にあるためです。
ただし、相談先の弁護士は、次で解説をするようによく選定することをおすすめします。
VTuberが誹謗中傷を相談する弁護士を選ぶポイント
VTuberが誹謗中傷の被害に遭った場合、相談先の弁護士はどのように選べばよいのでしょうか?
弁護士を選ぶ際の主なポイントは、次のとおりです。
誹謗中傷トラブルへの対応に慣れていること
誹謗中傷問題の解決は、時間との勝負であるといっても過言ではありません。
対応に時間がかかってしまうとプロバイダでのログが消えてしまい、対応が難しくなる可能性が高いでしょう。
そして、誹謗中傷トラブルをスムーズに進行して解決するには、ノウハウの蓄積が必要です。
そのため、VTuberが誹謗中傷トラブルを相談する弁護士は、誹謗中傷トラブルへの対応に慣れている事務所を選ぶとよいでしょう。
VTuberへの誹謗中傷への対応ノウハウがあること
VTuberはその概念が登場してからまだ日が浅く、判例の蓄積もありません。
また、名誉毀損罪の成立などには「同定可能性」が必要とされているところ、VTuberの「中の人」が誰であるのか知られていない場合も多く、この場合に同定可能性があるといえるかどうか判断が難しいところです。
このあたりは、事例ごとに個々で判断をしていくしかありません。
そのため、VTuberへの誹謗中傷では、一般的な誹謗中傷よりもさらに踏み込んだ検討が必要となることを知っていただき、VTuberへの誹謗中傷に関する対応ノウハウがある弁護士を相談先に選ぶとよいでしょう。
まとめ
VTuberが誹謗中傷の被害に遭うケースは、増加傾向にあります。
しかし、VTuberが被害者である誹謗中傷へ対応するには、VTuberという職業の特殊性を熟知していなければなりません。
また、誹謗中傷への法的措置は、時間との勝負です。
対応に時間がかかってしまうとプロバイダでのログが消えてしまい、対応が困難となる可能性が高まるでしょう。
そのため、VTuberが誹謗中傷の被害に遭った場合には、VTuberの誹謗中傷に関する事件対応についてノウハウのある弁護士に、早期にご相談ください。
Authense法律事務所は誹謗中傷トラブルの解決に力を入れており、VTuberへの誹謗中傷のご相談も多く寄せられています。
また、ご希望に応じて、オンラインでの打ち合わせも可能です。
VTuberが誹謗中傷の被害に遭ってお困りの際には、誹謗中傷への対応ノウハウが体系化されているAuthense法律事務所まで、お気軽にご相談ください。
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