コラム
公開 2023.06.29

単体1899_新規_発信者情報開示請求とは?やり方の流れやかかる費用を弁護士がわかりやすく解説

発信者情報開示請求とは、インターネット上に書き込みなどをした相手に関する情報をプロバイダから開示してもらう手続きです。
誹謗中傷などの書き込みをした相手に対しては、損害賠償請求額などの法的措置をとれる可能性があります。

しかし、インターネット上での誹謗中傷であれば誰が書き込んでいるのかわからず、そのままでは法的措置をとることは困難です。
そこで、法的措置をとる前段階として、プロバイダから相手の情報を開示してもらう手続きが必要となります。
これが、発信者情報開示請求です。

では、発信者情報開示請求はどのように進めればよいのでしょうか?
今回は、発信者情報開示請求の流れなどについて弁護士がくわしく解説します。

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発信者情報開示請求とは

発信者情報開示請求とは、誹謗中傷などの書き込みをした人の情報を開示してもらうための手続きです。
誹謗中傷などの被害に遭って権利が侵害された場合には、相手に対して損害賠償請求などの法的措置をとることができます。

ただし、誹謗中傷の舞台がインターネット上であった場合には、書き込みをした相手が誰であるのかわからないことが少なくないでしょう。
そして、相手が特定できなければ、相手に対いて法的措置をとることは困難です。

そこで、法的措置に先立って相手が誰であるのか特定する必要が生じます。
これが、発信者情報開示請求です。

なお、発信者情報を開示するよう書き込みの舞台となったTwitterなどに求めても、任意で開示に応じてもらえる可能性はほとんどありません。
そのため、一般的には裁判上で開示請求をすることになるでしょう。

発信者情報開示請求をする主な目的

発信者情報開示請求は、そもそも何を目的として行うものなのでしょうか?
主な目的は次の2点です。

相手に対して損害賠償請求をするため

インターネットに誹謗中傷などの書き込みがなされたことによって、社会的評価が低下したなどの損害をこうむった場合や自身の名誉感情(自尊心など)が傷つけられた場合には、相手に対して損害賠償請求ができる可能性があります。

しかし、損害賠償請求をするためには、相手が誰であるのか特定できていなければなりません。
相手が誰であるのかわからない状態で、インターネット上のダイレクトメールなどで「慰謝料を支払ってください」などと請求しても、無視されてしまえばそれ以上どうしようもないためです。
そのため、損害賠償請求をしたい際には、まず相手を特定することが第一歩です。

相手が誰であるのか特定ができたら、弁護士などを通じて裁判外で請求をすることが一般的です。
ここで相手が謝罪をして請求した損害賠償請求額を支払った場合には、裁判に至ることなく示談成立となります。

一方、相手が無理な値下げ要求をするなど不誠実な態度を取っている場合や、相手が請求を無視している場合などは、裁判上での請求へと移行します。
裁判上での請求によって損害賠償請求が認められれば、相手は裁判所が認定した損害賠償額を支払わなければなりません。

それでも請求を無視した場合には、強制執行などの手続きをして強制的に履行させることとなるでしょう。

相手を刑事告訴するため

インターネット上での誹謗中傷が刑法上の罪に該当する場合には、相手を刑事告訴することも選択肢の一つとなります。
たとえば、投稿の内容が「名誉毀損罪」や「侮辱罪」に該当する場合などが挙げられます。

これらの罪は「親告罪」であり、相手を罪に問うためには被害者側からの罪の申告(「告訴」といいます)が必要です(刑法232条)。
そして、告訴をするにあたっては、原則として被害者側にて加害者を特定しておくことが求められます。
そのため、相手を刑事告訴する前に発信者情報開示請求を行って相手を特定しなければなりません。

相手の特定ができたら、告訴状を作成し警察などへ提出します。
告訴状の受理後は警察にて捜査が行われ、相手に逃走のおそれがあるなど状況によっては、相手の身柄を拘束する「逮捕」がなされます。

その後事件は検察に送られ(「送検」といいます)、検察にて捜査がなされます。
そのうえで、事件を刑事裁判にかける(「起訴」といいます)か不起訴とするかが決まります。
起訴されて有罪判決が下ったら、相手に前科がつくという流れです。

ただし、告訴状の受理後における捜査方法などについて被害者が指示をすることはできません。
また、警察は人命にかかわる緊急の事件を多数抱えていることも多く、名誉毀損事件などはどうしても優先順位が落ちてしまいがちであることは理解しておく必要があるでしょう。

発信者情報開示請求をするまでの基本的な流れ

発信者情報開示請求をする際の基本的な流れは次のとおりです。

スクリーンショットなどで証拠を残す

インターネット上で誹謗中傷などの被害に遭ったら、まずは書き込みのスクリーンショットなどを撮影して証拠を残しましょう。
証拠を保全しておかなければ、相手が書き込みを削除などして証拠が消えてしまう可能性があるためです。

スクリーンショットは、次の内容がわかるように撮影します。

  • 書き込みの内容
  • 書き込みの日時
  • 前後の書き込みなど発言の流れ
  • 投稿のURL

なお、スマートフォンから画面キャプチャを撮影した場合には、投稿のURLが掲載されないことが一般的です。
そのため、スマートフォンでスクリーンショットを撮る際には、画像ではなくPDFでページ全体を保存するようにしてください。

なお、書き込まれた内容によっては、できるだけ早く削除して欲しいと考える場合もあるでしょう。
その場合であっても、焦って相手に投稿の削除を求めたり、Twitter社などのコンテンツプロバイダに削除請求をしたりすることはおすすめできません。
投稿が削除されてしまうと、スクリーンショットを撮影に抜けや漏れがあったとしても、追加での撮影ができなくなってしまうためです。

そのため、投稿の削除を求めるのは、少なくとも弁護士へ相談してからの方がよいでしょう。

できるだけ早期に弁護士へ相談する

投稿のスクリーンショットを撮影したら、できるだけ早く誹謗中傷問題にくわしい弁護士へ相談してください。

誹謗中傷への法的措置は、時間との勝負であるといっても過言ではありません。
そのため、投稿がなされた当日や翌日などに相談ができるとベストです。

プロバイダに直接開示請求を行う

弁護士へ依頼すると、まずは弁護士からTwitterなどのコンテンツプロバイダに対して直接発信者情報開示請求を行います。

ただし、コンテンツプロバイダが任意での開示請求に応じてくれる可能性はほとんどありません。
コンテンツプロバイダが独自で書き込みの違法性を判断することは難しく、仮に違法性がない投稿について任意での開示をしてしまえば、書き込みをした側から訴訟などがなされるリスクがあるためです。

発信者情報開示命令の申立てを行う

コンテンツプロバイダが任意での開示に応じてくれない場合には、裁判上での発信者情報開示請求へ移行します。

一般的な民事裁判には時間がかかるため、インターネット上での権利侵害の場合には仮処分の申立てを行うことが多いでしょう。
仮処分とは、申立てによって裁判所が決定する暫定的な処置です。
暫定的な処置とはいえ、勝訴をしたのと同等の効果(つまり、発信者情報の開示命令)を得ることができます。

なお、発信者情報開示に関する仮処分を申し立てる際には、10万円から30万円の金銭を供託しなければなりません。
この供託金は原則として情報開示後に返還されますが、仮にその後本訴となり仮処分が誤っていた(本来であれば開示すべきでなかった)と判断された場合には、この供託金の返還を受けることができず損害をこうむる可能性があります。

必要に応じて提供命令の申立てを行う

発信者情報開示命令の申立てと併せて、状況に応じて提供命令の申立てを行います。
発信者情報開示命令でIPアドレスやタイムスタンプの開示を請求し、提供命令で接続プロバイダに関する情報を提供するよう請求します。

提供命令の申立てを行うべきであるかどうかはケースバイケースであり、依頼先の弁護士とよく相談して検討する必要があるでしょう。

コンテンツプロバイダからIPアドレスなどの情報が開示される

発信者情報開示請求が認められると、コンテンツプロバイダから誹謗中傷などの投稿のIPアドレスやタイムスタンプなどの情報が開示されます。

この時点では、まだ書き込みをした人の住所や氏名はわかりません。
なぜなら、Twitter社などのコンテンツプロバイダは、そもそも書き込みをした人の住所や本名の情報を保有していないことが多いためです。

アクセスプロバイダから契約者の情報が開示される

コンテンツプロバイダから開示されたIPアドレスやタイムスタンプなどの情報をもとに、KDDI社などのアクセスプロバイダに対して契約者情報の開示を請求します。
こちらも任意での開示には応じてもらえないことが一般的であるため、裁判上での開示請求が必要となるでしょう。

アクセスプロバイダから情報の開示を受けることで、ようやく書き込みをした人が書き込みに使ったインターネットプロバイダの契約者住所や氏名がわかります。
これでようやく、投稿をした人に対して損害賠償請求などをする準備が整ったということです。

発信者情報開示請求にかかる費用

発信者情報開示請求をした場合、どの程度の費用が掛かるのでしょうか?
手続きに要する費用の目安は次のとおりです。

なお、これらの手続きを弁護士に依頼した場合には、別途30万円から100万円程度の報酬が発生します。
具体的な費用は請求の進め方などによって異なるため、詳細な情報は依頼先の弁護士へご相談ください。

サイト管理者(コンテンツプロバイダ)への開示請求に対してかかる費用

(オーセンス様へ:こちら裁判所のページで該当の記載が探せませんでした。こちらhttps://asiro.co.jp/media/it/17663/など複数のサイトを参考としております)

サイト管理者であるコンテンツプロバイダに対する発信者情報開示請求(仮処分)でかかる主な費用は次のとおりです。

内訳 費用(目安)
収入印紙 2,000円
送達用切手 1,000円程度
供託金 10万円から30万円程度

なお、供託金の額は事件の内容によって異なります。
また、先ほど解説したように、供託金は開示後に原則として返還されます。

アクセスプロバイダへの開示請求に対してかかる費用

コンテンツプロバイダからIPアドレスなどの開示を受けた後、アクセスプロバイダに対して契約者の情報開示を請求する場合にかかる主な費用は次のとおりです。

内訳 費用(目安)
収入印紙 1万3,000円
送達用切手 6,000円程度

発信者情報開示請求を弁護士に依頼すべき理由

発信者情報開示請求について弁護士へ依頼をした場合には、弁護士報酬がかかります。
しかし、それでも発信者情報開示請求は無理に自分で行わず、誹謗中傷問題にくわしい弁護士へ依頼した方がよいでしょう。
その主な理由は次のとおりです。

発信者情報開示請求は簡単ではないため

発信者情報開示請求は裁判上の手続きであり、決して簡単なものではありません。

発信者情報の開示を裁判所に認めてもらうためには、投稿者である相手が権利侵害をしたという事実が必要です。
そして、裁判所に対して、発信者情報の開示を受けることが妥当であると考える理由などを、証拠や根拠条文などを用いて説明しなければなりません。
単に「嫌なことを書かれたから」「悪口を書かれたから」などという理由のみで、簡単に発信者情報の開示が認められるわけではないのです。

発信者情報開示請求を自分で行い裁判所に開示が妥当であると認めてもらうためには、法律や裁判手続きに関する深い理解が必要となります。
そのため、これを自分で行うことはハードルが高いといえるでしょう。

発信者情報開示請求は時間との勝負であるため

発信者情報開示請求は、時間との勝負であるといっても過言ではありません。
なぜなら、プロバイダはそれぞれログの保存期間を定めており、これを過ぎるとログが消されて発信者情報の開示を受けることが事実上できなくなってしまうためです。

いくら裁判所が開示を認めても、存在しない情報を開示してもらうことはできません。
このログの保存期間はプロバイダによって異なりますが、おおむね3か月から6か月程度とされていることが多いでしょう。

そのため、自分で一つずつ調べながら手続きを進めていては、ログの保存期間が過ぎてしまうリスクが高くなります。
手続きを早期に行い開示請求が受けられる可能性を高めるためにも、発信者情報の開示請求は弁護士へご依頼ください。

まとめ

発信者情報開示請求とは、誹謗中傷などの被害に遭った際にその相手を特定するための手続きです。
損害賠償請求などの前段階として行うことが多いでしょう。

発信者情報開示請求をコンテンツプロバイダやアクセスプロバイダに対して直接行っても、任意での開示に応じてもらえる可能性はほとんどありません。
そのため、一般的には裁判上での請求となります。
この手続きにはスピードが求められるほか専門知識が必要となるため、お困りの際には早期に弁護士へご相談ください。

Authense法律事務所では誹謗中傷問題の解決に力を入れており、発信者情報開示請求に詳しい弁護士が多数在籍しております。
発信者情報開示請求をご希望の際には、Authense法律事務所までお気軽にご相談ください。

参考文献

記事を監修した弁護士
authense
Authense法律事務所記事監修チーム
Authense法律事務所の弁護士が監修、法律問題や事例についてわかりやすく解説しています。Authense法律事務所は、「すべての依頼者に最良のサービスを」をミッションとして、ご依頼者の期待を超える弁護士サービスを追求いたします。どうぞお気軽にご相談ください。
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