誹謗中傷の被害が後を絶たず、当事務所にも多くのご相談が寄せられています。
誹謗中傷をする人は匿名であることを過信して、安易な書き込みをすることも少なくありません。
しかし、誹謗中傷は侮辱罪や名誉毀損罪などの罪にあたる可能性があります。
また仮に匿名であったとしても、発信者情報開示請求などをすることで相手の特定が可能です。
そこでここでは、誹謗中傷をした相手への刑事告訴についてくわしく解説します。
誹謗中傷に対する刑事告訴とは
誹謗中傷の被害に遭った場合には、相手を刑事告訴することが選択肢の一つとなります。
はじめに、刑事告訴の概要を解説しましょう。
刑事告訴とは
刑事告訴とは、捜査機関に対して犯罪の事実を申告し、犯人の処罰を求める意思表示です。
刑事告訴は法律上必ずしも書面による必要はなく、口頭で行うことも可能とされています。
ただし、実際には告訴状を提出して行うことが多いといえます。
誹謗中傷が該当し得る罪の多くは「親告罪」
後ほど解説するように、誹謗中傷は「侮辱罪」や「名誉毀損罪」などに該当することが多いでしょう。
侮辱罪と名誉毀損罪は、いずれも「親告罪」にあたります。
親告罪とは、検察官が被疑者を起訴する(刑事裁判にかける)ために、被害者からの告訴を必須とする罪です。
つまり、侮辱罪や名誉毀損罪で相手を罪に問うためには、刑事告訴をしなければならないということです。
一方、脅迫罪は親告罪ではありません。
しかし、よほど大々的になされた脅迫などでない限り、捜査機関が独自に見つけて捜査するケースは稀でしょう。
そのため、たとえ親告罪ではなくても、刑事告訴が選択肢の一つとなります。
刑事告訴が受理されるとどうなる?
告訴が受理された後の基本的な流れは次のとおりです。
- 警察が事件を捜査する
- 必要に応じて加害者を逮捕する
- 検察へ事件を送致する
- 検察が事件を捜査し、起訴か不起訴かを決定する
- 刑事裁判が開かれ、有罪・無罪や量刑が決定される
刑事裁判において有罪となれば、相手に前科がつきます。
誹謗中傷が該当し得る主な罪
刑法などに「誹謗中傷罪」などという罪が存在するわけではありません。
誹謗中傷は、その内容に応じて次の罪などに該当します。
- 名誉毀損罪
- 侮辱罪
- 脅迫罪
その他、場合によっては威力業務妨害罪などに該当する場合もあります。
なお、その誹謗中傷がどの罪状に該当するかの判断は容易ではありません。
お困りの際には、弁護士へご相談ください。
名誉毀損罪
誹謗中傷は、名誉毀損罪に該当する可能性があります。
名誉毀損罪とは、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず」、該当する罪です(刑法230条)。
たとえば、誰もが見られるSNSやインターネット上の掲示板などに相手の社会的地位を下げるような事実(「真実」という意味ではありません。)を書き込んだ場合には、名誉毀損罪に該当する可能性が高いでしょう。
ただし、次の要件をすべて満たす場合には、相手を罪に問うことはできません。
- 公共の利害に関する事実に係るものであること
- その目的が専ら公益を図ることにあったと認められること
- 事実の真否を判断し、真実であることの証明があったこと
名誉毀損罪に該当すると、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金に処される可能性があります。
侮辱罪
誹謗中傷は、侮辱罪に該当する可能性があります。
侮辱罪とは、「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した」場合に該当する罪です(同231条)。
名誉毀損と似ていますが、こちらは具体的な事実(「違法薬物をやっている」とか「裏口入学だ」など)を摘示する必要はなく、抽象的な悪口であっても該当し得る点が大きく異なります。
侮辱罪に該当すると、次のいずれかの刑に処される可能性があります。
- 1年以下の懲役
- 禁錮
- 30万円以下の罰金
- 拘留
- 科料
なお、侮辱罪の法定刑は、以前は「拘留または科料」のみとされていました。
しかし、時に人を死に至らしめるにも関わらずこれでは軽すぎるとの批判がなされ、2022年(令和4年)7月7日から改正法が施行されています。
脅迫罪
誹謗中傷は、脅迫罪に該当する可能性があります。
脅迫罪とは、対象の相手や親族の「生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した」場合に該当する罪です(同222条)。
たとえば、誹謗中傷がエスカレートして「お前を殺してやる」などと発言した場合などには、これに該当する可能性が高いでしょう。
脅迫罪に該当すれば、2年以下の懲役または30万円以下の罰金に処されます。
誹謗中傷に対して刑事告訴をする基本的な流れ
誹謗中傷に対して刑事告訴をする場合の基本的な流れは、次のとおりです。
誹謗中傷の証拠を残す
インターネット上で誹謗中傷の被害に遭ったら、まずは誹謗中傷の証拠を残しましょう。
なぜなら、証拠がなければ相手を罪に問うことなどが困難である一方で、インターネット上の書き込みはいつ消えてしまうかわからないためです。
誹謗中傷の証拠は、スクリーンショットの撮影で残すことが多いでしょう。
スクリーンショットは、次の事項などが漏れなく掲載されるように撮影します。
- 誹謗中傷投稿の全文
- 誹謗中傷投稿に関連する前後のやり取り
- 投稿の日時
- 投稿のURL
- Twitterなどアカウント制のSNSなどである場合には、相手のプロフィールページとそのURL
なお、スクリーンショットはスマートフォンからでも撮影できるものの、スマートフォンでの撮影ではURLの表示が不完全なものとなりがちです。
そのため、スクリーンショットはパソコンから撮影することをおすすめします。
なお、自分で撮影したスクリーンショットには不備があることが少なくありません。
そのため、投稿が消える前にできるだけ早く弁護士へ相談し、スクリーンショットに不足がないか確認してもらうとよいでしょう。
誹謗中傷をした相手を特定する
インターネット上での誹謗中傷の場合には、投稿者が誰であるのかわからないことが少なくありません。
しかし、刑事告訴の受理にあたっては、あらかじめ相手に身元を特定するよう求められることも多いです。
そのため、刑事告訴に先立って相手の特定を進める必要があります。
投稿者を特定するには、誹謗中傷の舞台となったSNSやインターネット掲示板の運営者(「コンテンツプロバイダ」などといいます)に対して、発信者情報開示請求を行います。
しかし、裁判外で任意の開示を求めても応じてもらえないことが多いでしょう。
そこで、裁判上で開示請求を行うことが一般的です。
とはいえ、通常コンテンツプロバイダは投稿者の住所や氏名まで把握していません。
そのため、多くのケースで、次の2段階での請求が必要となります。
- コンテンツプロバイダに対して発信者情報開示請求をして、IPアドレスやタイムスタンプなどの情報を得る
- 「1」で得た情報をもとにアクセスプロバイダ(KDDIやNTTなど)に対して発信者情報開示請求をして、契約者の住所や氏名などの情報を得る
この二段階を踏むことで、投稿者が特定できます。
なお、2022年(令和4年)10月1日に施行された改正プロバイダ制限責任法により、新たに「発信者情報開示命令」手続きが設けられました。
これは、上の「1」と「2」の手続きをまとめて行うことのできる手続きです。
すべてのケースでこの発信者情報開示命令が使えるわけではないものの、こちらを活用できる場合には投稿者特定までの期間が大きく短縮できる場合もあるでしょう。
刑事告訴をする
相手の特定ができたら、刑事告訴を行います。
誹謗中傷事件の場合には、警察に対して告訴状を提出する形で刑事告訴をすることが一般的でしょう。
誹謗中傷をした相手を刑事告訴する場合の注意点
誹謗中傷をした相手を刑事告訴する際には、次の点に注意しましょう。
無理に自分で対応しない
誹謗中傷への刑事告訴を、無理に自分で行うことはおすすめできません。
なぜなら、受理される告訴状を自分で作成することは容易ではないためです。
また、先ほども解説したように、誹謗中傷の刑事告訴ではあらかじめ相手を特定しなければならないことも少なくありません。
相手を特定するために行う発信者情報開示請求には法令や裁判手続きへの深い理解が不可欠であり、自分で行うためには多大な手間と時間を要するでしょう。
時間がかかった結果、次で解説するログの保存期間が過ぎてしまうと、もはや相手を特定することは困難です。
時間との勝負であることを知っておく
誹謗中傷への法的措置は、時間との勝負であるといっても過言ではありません。
その理由は次のとおりです。
ログの保存期間が短いから
プロバイダにログが残っていなければ、発信者情報の開示を受けることはできません。
存在しない情報は、開示してもらいようがないためです。
このログの保存期間はプロバイダによって異なるものの、おおむね3か月から半年程度としていることが多いでしょう。
つまり、対応が遅れてこの期間が過ぎてしまうと、もはや相手の特定は困難になるということです。
告訴時効や公訴時効があるから
犯罪行為からあまりにも時間が経ってしまうと、相手を罪に問うこと(起訴すること)ができなくなります。
この「公訴時効」は犯罪行為の重さによって異なっており、名誉毀損罪や侮辱罪の場合には3年とされています(刑事訴訟法250条、刑法230条、同231条)。
また、これとは別に、刑事告訴をするための時効(告訴時効)にも注意しなければなりません。
名誉毀損罪や侮辱罪のような親告罪では、犯人を知った日から6か月が経過すると、もはや刑事告訴ができないとされています(刑事訴訟法235条)。
告訴状の受理後は警察や検察に委ねることになる
告訴状が受理された後は、事件の捜査は警察や検察に委ねられます。
これに対して、被害者が逐一報告を求めたり捜査の進め方について指示をしたりすることはできません。
また、たとえ相手が起訴され有罪になったとしても、被害者に対して金銭が支払われたり謝罪広告が打たれたりすることはありません。
これらはあくまでも「民事」の話であるため、刑事と混同しないようにしてください。
刑事告訴の他に誹謗中傷に対してとり得る法的措置
誹謗中傷に対して取り得る法的措置には、刑事告訴のほかどのようなものがあるのでしょうか?
主な法的措置は次のとおりです。
削除請求
削除請求とは、投稿を削除するようSNSやインターネット掲示板の運営者(投稿者が判明していれば投稿者に請求することもあります。)に対して請求することです。
削除請求には主に次の方法が存在します。
- 所定のフォームなどから自分で削除請求をする
- 所定のフォームなどから弁護士経由で削除請求をする
- プロバイダ制限責任法で定められた「送信防止処置依頼書」を送付して削除請求をする
- 裁判で削除請求をする
いずれの方法が適切であるかは状況によって異なるため、弁護士に相談のうえ検討するとよいでしょう。
発信者情報開示請求
2つ目は、発信者情報開示請求です。
発信者情報開示請求の内容は、先ほど解説したとおりです。
発信者情報開示請求は単体で行うよりも、刑事告訴や損害賠償請求の前提として行うことが多いでしょう。
損害賠償請求
3つ目は、損害賠償請求です。
損害賠償請求とは、誹謗中傷によってこうむった損害を金銭で賠償するよう相手に対して求めることです。
損害賠償請求も刑事告訴と同じく、原則としてあらかじめ相手を特定することが必要となります。
相手が特定できたら、まず弁護士などから書状を送るなどして請求することが多いでしょう。
相手が支払いに応じなかったり相手が不誠実な対応をしたりする場合には、裁判上での請求へと移行します。
Authense法律事務所へ告訴状の作成を依頼した場合にかかる費用
Authense法律事務所では誹謗中傷問題の解決に力を入れており、初回のご相談は60分間無料でお受けしています。
その後、刑事告訴に必要な告訴状の作成をご依頼頂いた場合の報酬額は次のとおりです。
- 着手金:440,000円(税込)
- 受理された場合の追加報酬:220,000円(税込)
- 相手が起訴された場合の追加報酬:220,000円(税込)
また、別途33,000円の事務手数料がかかるほか、発信者情報開示請求が必要である場合にはこれに別途報酬がかかります。
具体的な報酬はご依頼前に別途提示しますので、お困りの際はまずお気軽にご相談ください。
お困りの際はAuthense法律事務所へご相談ください
インターネットの普及により、誰もが手軽に発信できるようになりました。
今までは一方的に見ることしかできなかった有名人に対して直接コメントを送ったり、自分の意見を発信したりすることも可能です。
しかしその反面、誹謗中傷が社会問題となっています。
匿名であることを理由に、面と向かってはいえないような内容を書き込んでしまう人もいるでしょう。
誹謗中傷は、侮辱罪や名誉毀損罪など刑事罰の対象となり得る行為です。
被害に遭ってしまった場合には、相手が匿名でも諦めず刑事告訴や損害賠償請求を検討するとよいでしょう。
誹謗中傷に対して毅然と対応することで、以後の誹謗中傷を防ぐ効果も期待できます。
Authense法律事務所では、誹謗中傷トラブルの解決に力を入れています。
誹謗中傷の被害に遭ったら一人で悩まず、できるだけ早期にAuthense法律事務所までご相談ください。
初回のご相談は60分間無料です。
ささいなお悩みもお気軽に
お問合せください初回相談45分無料※一部例外がございます。
オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。
- 24時間受付、通話無料
- 24時間受付、簡単入力