Authense社労士法人コラム
公開 2024.04.24

複数1617_新規_36協定の「月45時間」を超えたらどうなる?違法?対策を社労士がわかりやすく解説

36協定を締結させることで、従業員を適法に残業させたり休日労働させたりすることが可能となります。
そのため、多くの会社で、36協定を締結していることでしょう。

しかし、36協定を締結した場合であっても、1か月あたりの残業時間の上限は45時間に制限されています。
では、この45時間はどのように考えればよいのでしょうか?

また、上限時間である45時間を超えそうな場合、どのような対策を講じればよいのでしょうか?
今回は、36協定の上限である「45時間」の考え方や超えそうな場合の対策などについて、社労士がくわしく解説します。

36協定とは

36協定とは、従業員に残業や休日労働をさせる場合に締結すべき協定です。

労働条件などについて規定する労働基準法(以下、「労基法」といいます)では、労働時間の上限を「1日8時間、1週間40時間」と制限しています(労基法32条)。
これを「法定労働時間」といいます。

また、少なくとも1週間に1回は、休日を与えなければなりません(同35条)。
この休日を「法定休日」といいます。

原則として、会社(使用者)はこの法定労働時間を超えて従業員を残業させたり法定休日に労働させたりしてはなりません。
ただし、36協定を締結した場合は例外的に、従業員に法定時間外労働や法定休日労働をさせることが可能となります(同36条)。

このことが労基法の36条に定められているため、この協定は「36(さぶろく)協定」と呼ばれることが一般的です。

36協定を締結する相手方は、それぞれ次の者です。

  • 事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合:その労働組合
  • 労働者の過半数で組織する労働組合がない場合:労働者の過半数を代表する者

36協定を締結したら、管轄の労働基準監督署へ届け出なければなりません。
なお、36協定を締結しても、労働基準監督署へ届け出ていなければ協定の効力が生じないことには注意が必要です。

労働時間の上限

36協定を締結したからといって、従業員を無制限に残業させられるようになるわけではありません。
では、労働時間の上限は、どのように法定されているのでしょうか?
ここでは、36協定がある場合とない場合とにおける労働時間の上限について解説します。

原則

36協定がない場合、従業員を労働させられる時間は「1日8時間、1週間40時間」です(労基法32条)。
また、週に1回は休日を設けなければなりません(同35条)。
これを超えた残業や法定休日の労働をさせることは違法であり、罰則の適用対象となります。

なお、会社が「9時から17時まで、休憩1時間」など、独自の労働時間を設けている場合もあります。
このように、会社が定めた独自の労働時間を「所定労働時間」といいます。

労働時間のカウントは休憩時間を除外するため、この例の場合の所定労働時間は7時間です。
36協定を締結していなくても、この場合に1時間(法定労働時間である8時間に至るまで)の残業をさせることは違法ではありません。

同様に、週1回ではなく、土日の2日を休日としていることもあるでしょう。
この場合に、土曜だけ(または日曜だけ)の休日出勤をさせることも違法ではありません。
労基法が求めているのは、あくまでも週に1回の休日の確保であるためです。

「残業」や「休日労働」のすべてに36協定が必要なのではなく、36協定が必要なのは「法定時間外労働」や「法定休日の労働」です。
誤解のないよう整理しておくとよいでしょう。

36協定を締結した場合

36協定を締結した場合は、法定労働時間を超えた労働や法定休日の労働をさせることが可能となります。
ただし、36協定を締結した場合であっても、時間外労働の上限は1か月あたり45時間、1年あたり360時間までです。

なお、36協定に特別条項を設けた場合、システム障害や納期のひっ迫など「臨時的で特別な事情」が生じた場合に限り、これを超える時間外労働をさせることが可能となります。
ただし、特別条項を発動した場合であっても、時間外労働の上限時間はそれぞれ次のとおりです。

  • 時間外労働:年720時間以内
  • 時間外労働+休日労働の合計:月100時間未満、かつ2~6か月の各月平均がすべて月80時間以内

また、特別条項を発動することができるのは、最大で年6回(6か月)までに制限されています。
36協定の特別条項には注意点が少なくないため、36協定に特別条項を設ける場合は社労士などの専門家へご相談ください。

36協定の「月45時間」「年360時間」の考え方

36協定の「月45時間」「年360時間」は、どのように考えればよいのでしょうか?
ここでは、迷いがちなポイントに焦点を当てて解説します。

36協定では日ごと、月ごと、年ごとの上限時間を定める

36協定は、画一的な内容ではありません。
36協定の内容は会社(事業場)ごとに異なっており、協定の中で「1日あたり」「1か月あたり」「1年あたり」の残業時間の上限をそれぞれ定めます。

そのため、厳密にはどの会社であっても「月45時間」「年360時間」が残業時間の上限となるのではなく、その会社の事業場で締結した36協定で定めた上限時間に従うこととなります。

ただし、36協定で定める上限時間は、労基法で定められた「月45時間」「年360時間」の制限を超えることはできません。

毎月45時間残業させると年間の上限を超えてしまう

36協定を締結した場合における時間外労働の上限時間は「月45時間」ですが、毎月45時間までの時間外労働をさせられるわけではありません。
なぜなら、仮に毎月45時間の残業をした場合、これを1年間に換算すると540時間(=45時間×12か月)となり、年間制限である360時間を超えてしまうためです。

そのため、実際の運用では「1か月の上限は45時間」と考えるのではなく、月の時間外労働の目安を30時間(=360時間÷12か月)と考え、30時間を超えた場合にアラートを出す仕組みとするとよいでしょう。

起算日はいつ?

「月45時間」「年360時間」のカウントは、その36協定の起算日(適用初日)から開始されます。
36協定は、その協定の中で起算日と有効期限を定めます。

たとえば、ある事業場における36協定の始期を「令和6年4月1日」とした場合、「月45時間」「年360時間」のカウントも令和6年4月1日から開始されます。

月の残業時間がちょうど45時間の場合は違法?

その事業場の36協定で1か月あたりの時間外労働時間の上限を法令の制限と同じ「45時間」としている場合、残業時間がちょうど45時間であった場合は違法ではありません。
ただし、45時間を少しでも超えた場合は違法となるためご注意ください。

また、先ほど解説したように、毎月45時間の残業をさせると、1年あたりの残業時間は360時間を超えてしまいます。
そのため、毎月のように45時間ギリギリまで残業をしている従業員がいる場合、その従業員の業務負担を減らしたり事前にアラートを出したりするなどの対策が必要となるでしょう。

36協定に違反した場合の罰則

36協定に違反すると、罰則の適用対象となります。

適用される可能性がある罰則は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金です(同119条)。
罰則は雇用主である会社に対して課されるのみならず、労務管理者である経営者や営業所長などに課される場合もあるため注意が必要です。

36協定に違反する場合には、次のケースなどが挙げられます。
これらによって、実際に書類送検がされたケースは少なくありません。

  • 36協定を締結することなく、「1日8時間、1週間40時間」を超えて従業員を労働させた
  • 36協定を締結することなく、法定休日に労働させた
  • 36協定を締結していたが、「月45時間」や「年360時間」の制限を超えて法定時間外労働をさせた
  • 特別条項付きの36協定を締結していたが、特別条項の上限を超えて法定時間外労働をさせた
  • 特別条項付きの36協定を締結していたが、特別条項の発動条件を満たしていないにも関わらず「月45時間」や「年360時間」の制限を超えて法定時間外労働をさせた

36協定に違反して書類送検をされた場合は、労働基準監督署や都道府県労働局のホームページで企業名や違反事案等が公表される可能性があります。
公表事案は誰でも見ることができるため、取引関係や融資などに影響が及ぶおそれが否定できません。

月45時間の労働時間を超えそうな場合の対策

36協定を締結している場合において、従業員の1か月あたりの時間外労働時間が45時間を超えそうな場合、どのように対処すればよいのでしょうか?
最後に、月45時間の残業を超過しそうな場合の対策を解説します。

社労士へ相談する

従業員の残業時間が月45時間を超えそうな場合は、できるだけ早期に社労士へご相談ください。
その会社(事業場)が36協定に特別条項を設けている場合にこの適用対象とできるかどうかなど、具体的な事案に合わせて対処法をアドバイスします。

また、今後の再発防止策や労務管理方法などについてもアドバイスを受けることが可能です。

特別条項付きの36協定を締結する

月45時間の残業時間を超える可能性がある場合、36協定に特別条項を設けておくとよいでしょう。
現時点で特別条項が入っていない場合は、社労士へご相談ください。

36協定の特別条項とは、臨時的で特別な事情が生じた場合に限り、月45時間の上限を超えて残業させるための規定です。
ただし、特別条項の中で、具体的な「臨時的で特別な事情」について定めなければなりません。

臨時的で特別な事情に該当し得るのは、次のものなどです。

  • 予算、決算業務
  • ボーナス商戦に伴う業務の繁忙
  • 納期のひっ迫
  • ⼤規模なクレームへの対応
  • システム障害への対応
  • 機械のトラブルへの対応

一方で、「業務上やむを得ない場合」や「業務の都合上必要な場合」など、恒常的な⻑時間労働を招くおそれがあるものは認められないとされています。
そのため、臨時的で特別な事情が生じたわけではないにもかかわらず月45時間前後を超える時間外労働が常態化している場合には、労務管理体制を抜本的に見直す必要があるでしょう。

再発防止策を講じる

法定時間外労働が月45時間を超えてしまった場合は、再発防止策を講じましょう。
具体的には、その月が終わってしまってから限度時間を超過したことに気付くのではなく、月の中途で限度時間超過のおそれを把握し、超えないように対処できる体制を構築することなどが考えられます。

たとえば、30時間など一定の時間外労働が生じた時点でアラートを出す仕組みを構築することなどです。
そのうえで、その月内はその従業員にできるだけそれ以上の残業をさせないよう注意します。

また、ある従業員に毎月にようにアラートが出る状態が続く場合は、業務の配分を見直すことなども検討する必要があるでしょう。
再発防止策の検討や労務管理体制の構築でお困りの際は、社労士へご相談ください。

まとめ

36協定を締結した場合における時間外労働の上限時間や、月の残業時間が上限である45時間を超えそうな場合の対策などを解説しました。
従業員代表者と36協定を締結することで、法定労働時間を超えての残業や法定休日労働が可能となります。

36協定を締結したからといって、従業員を無制限に残業させられるわけではありません。
36協定を締結していても、法定時間外労働の上限時間は、「月45時間、年360時間」です。

ただし、36協定に特別条項を設けることで、臨時的で特別な事情が生じた場合に限り、この上限を超えた残業をさせることが可能となります。
特別条項の設定については注意点や誤解も少なくないため、社労士のサポートを受けることをおすすめします。

Authense社会保険労務士法人では労務管理体制の構築や労使トラブルの予防支援に力を入れており、多くのサポート実績があります。
Authense弁護士事務所と同じAuthenseグループに属しているため、万が一労使トラブルが生じた場合であっても、弁護士と連携したスムーズな対応が可能です。

36協定の締結についてサポートをご希望の際や、月の残業時間が45時間を超過してお困りの際は、Authense社会保険労務士法人までお気軽にご相談ください。

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