Authense社労士法人コラム
公開 2024.04.07

複数1620_新規_36協定とは?残業時間の上限や違反時の罰則を社労士がわかりやすく解説

法定された労働時間を超えて従業員を働かせるには、36協定(三六協定)を締結して届け出なければなりません。

36協定とはどのようなものを指すのでしょうか?
また、36協定を締結する際は、どのような点に注意する必要があるのでしょうか?

今回は、36協定の概要や締結の流れ、注意点などについて社労士がくわしく解説します。

36協定とは

36協定は、労働基準法(以下、「労基法」といいます)の36条に基づく協定です。
一般的には「さぶろくきょうてい」と呼ばれることが多いでしょう。

はじめに、36協定の概要について解説します。

36協定の概要

36協定とは、従業員に法定時間外労働をさせたり法定休日に労働をさせたりするために締結が必要となる協定です。
労基法36条では、次のように定められています(一部省略)。

  • 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間又は前条の休日に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。

労基法では、労働時間の上限を、原則として「1週間40時間まで」かつ「1日8時間まで」と定めています(労基法32条)。
これを「法定労働時間」といいます。
また、毎週少なくとも1回の休日を与えることが必要です(同35条)。

使用者は、原則として法定労働時間を超えて労働者を労働させたり、週1回の休日を設けずに労働させたりすることはできません。
一方で、36協定を締結すれば、適法に法定時間外労働をさせたり休日労働をさせたりすることが可能となります。
言い換えれば、適法に法定時間外労働をさせたり休日労働をさせたりしたい場合、あらかじめ36協定を締結する必要があるということです。

ただし、36協定を締結したからといって、上限時間の制限なく残業がさせられるわけではありません。
36協定を締結した場合であっても、時間外労働をさせられる時間は「1か月45時間、1年360時間」までとされています(同36条4項)。

特別条項付き36協定とは

36協定には、特別条項を付けることができます。
この特別条項が設けられた36協定を「特別条項付き36協定」などといいます。

特別条項を付けることで、突発的な事情が生じた際などに、例外的に「1か月45時間、1年360時間」の上限を超えて従業員を労働させることが可能となります。

ただし、特別条項を付けても無制限に労働時間を伸長させられるわけではなく、上限が定められています。
また、1か月あたり45時間を超えて時間外労働をさせることができるのは、1年のうち6回(6か月)までに制限されています。

時間外労働(残業)時間の制限

ここでは、36協定がない場合とある場合の労働時間の制限について解説します。

従業員を労働させられる時間は、原則としてそれぞれ次のとおりです。
ただし、例外もあるため、お困りの際はあらかじめ社会保険労務士(社労士)へご相談ください。

原則

従業員を労働させられる上限時間は、原則として1日あたり8時間、1週間あたり40時間です。
なお、休憩時間は労働時間から除かれます。
そのため、たとえば始業時間が9時であり、12時から13時までの1時間が休憩時間である場合、最大で18時まで労働させることが可能です。

なお、労基法で定められた労働時間を「法定労働時間」という一方で、会社が定めた労働時間を「所定労働時間」といいます。
所定労働時間は法定労働時間を超えることはできませんが、法定労働時間より短くすることは問題ありません。

たとえば、始業が9時で終業が17時、休憩を1時間(つまり、所定労働時間は7時間)としている会社は少なくないでしょう。
この場合において、1日1時間まで(つまり、1日の労働時間が法定労働時間である8時間に至るまで)の残業であれば、36協定の締結なく適法に行わせることが可能です。

具体的なケースで36協定締結の要否についてお悩みの際は、社労士へご相談ください。

36協定を締結した場合

36協定を締結した場合、法定労働時間を超えて労働させることができます。
この場合には、1か月あたり45時間、1年あたり360時間までの時間外労働(いわゆる「残業」)をさせることが可能です。

ただし、毎月45時間の残業をさせると、1年あたりの残業時間のトータルは540時間(=45時間×12か月)となり、年360時間の制限を超えてしまいます。
そのため、「月45時間」にだけ着目するのではなく、年間360時間を超えないよう労務管理を徹底することが必要です。

特別条項付き36協定を締結した場合

特別条項付き36協定を締結した場合は、1か月あたり100時間、1年あたり720時間までの時間外労働が可能となります。

ただし、特別条項を発動させられるのは臨時的な特別の事情がある場合だけです。
特別条項を定めたからといって、この残業時間を常態化させられるわけではありません。

また、特別条項を発動させることができるのは、1年間のうち最大で6回(6か月)までとされています。

特別条項については注意点が少なくありません。
実際に特別条項付きの36協定を締結しようとする際は、あらかじめ社労士までご相談ください。

36協定がないとどうなる?

従業員を雇用している会社の多くが、36協定を締結しています。
では、36協定がないと、どうなるのでしょうか?

ここでは、36協定がない場合の対応について解説します。

法定労働時間を超えて労働させることができなくなる

36協定がないと、法定労働時間を超えて従業員を働かせることができません。
裏を返すと、法定時間を超えて従業員を労働させる可能性が絶対にないのであれば、36協定の締結は不要です。

罰則の適用対象となる

36協定を締結していないにもかかわらず、従業員に法定時間外労働をさせた場合は、罰則の対象となります。
適用される可能性がある罰則は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金です。
そのため、従業員に少しでも法定時間外労働をさせる可能性がある場合は、36協定を締結しておいてください。

36協定を締結する流れ

36協定の締結は、どのように進めればよいのでしょうか?
ここでは、36協定を締結する流れについて解説します。

36協定を締結する

はじめに、36協定の内容を検討します。
内容の検討段階では、社労士や弁護士へご相談ください。

原案が作成できたら、従業員代表者と交渉をして書面で協定を結びます。
従業員代表者とは、次のいずれかの者です。

  • 労働者の過半数で組織する労働組合がある場合:その労働組合
  • 労働者の過半数で組織する労働組合がない場合:労働者の過半数を代表する者

ただし、管理監督者の立場にいる労働者は、36協定の相手方とはなれません。

この協定書には、労使の押印が必須です。
労働基準監督署へ届け出る書面への押印は不要となりましたが、労使間で締結する協定書には引き続き押印(または電子署名)が必要です。
混同しないようご注意ください。

所定の用紙に締結内容を記入する

36協定を締結したら、これを労働基準監督署へ届け出なければなりません。
厚生労働省のホームページから届出に必要な書類を入手し、必要事項を記載しましょう。

36協定届は、2021年4月1日から新様式となっています。
使用する様式を誤らないようご注意ください。

労働基準監督署長へ届け出る

特別条項付き36協定を締結したら、すみやかに管轄の労働基準監督署へ届け出ます。
36協定は締結しただけでは効力が生じず、届出時点から効力が生じます。

つまり、その36協定の起算日を「4月1日」と記載しても、実際に労働基準監督署へ届け出たのが4月13日である場合、効力発生日は4月13日になるということです。
この場合、4月1日から4月12日までに発生した時間外労働や休日労働は違法となることには注意が必要です。

労働者に周知する

36協定を締結したら、労働者に周知しなければなりません(同106条)。
周知する方法としては、次のものなどが考えられます。

  1. 常時、各作業場の⾒やすい場所へ掲示するか、備え付ける
  2. 個別の労働者に書面を交付する
  3. 作業場のパソコンの操作で、36協定の内容を常時確認できるようにする

実際には、同じく周知義務のある就業規則とともに「3」の方法をとることが多いでしょう。
ただし、この場合はアルバイトやパートなどすべての従業員にその端末を操作する権限がある必要があることには注意が必要です。
具体的な周知方法でお困りの際は、社労士へご相談ください。

36協定の注意点

36協定を締結する際は、どのような点に注意する必要があるのでしょうか?
最後に、36協定の注意点を4つ解説します。

36協定は拠点ごとに届出が必要となる

作業場や事業所が複数ある場合、36協定はその拠点ごとに締結し、届け出なければなりません。
本社だけで締結すればよいわけではないことに注意が必要です。

なお、本社と各事業場の協定内容が同じである場合、労働基準監督署への届出自体は本社で一括して行うことができます。
ただし、本社で一括して届け出る場合であっても、協定の締結自体は各事業場においてその事業場の従業員代表者と行わなければなりません。
誤解のないよう注意してください。

従業員が10名未満でも必要である

就業規則の作成や届出義務があるのは、常時使用する従業員が10名以上の場合だけです。
従業員が10名未満である場合、就業規則の作成や届出は義務ではありません。

一方で、36協定にはこのような従業員数による制限はありません。
たとえ従業員が1名だけであっても、法定労働時間を超えて働かせるには協定の締結が必要です。

就業規則と混同し、「従業員10名未満なら不要」との誤解が散見されるためご注意ください。

毎年締結し、更新が必要である

36協定は、たとえ内容に変更がなかったとしても、毎年締結して届け出る必要があります。
一度締結して届け出れば終わりというものではないため、毎年の更新を忘れないよう注意しましょう。

アルバイトやパートであっても除外されない

36協定は、正社員だけに関係するものではありません。
「当社に正社員は1人もおらず、全員アルバイトなので、36協定は関係ない」というのは誤解です。

雇用形態がアルバイトやパートであったとしても、法定時間を超えて労働させる場合、36協定の締結が必要です。
そのため、締結や届出を漏らさないようご注意ください。

まとめ

36(さぶろく)協定の概要と締結の流れ、主な注意点などを解説しました。
従業員を1日8時間、週40時間という法定労働時間を超えて働かせたり、週1日の法定休日に働かせたりするには、36協定を締結しなければなりません。

36協定を締結せずに法定労働時間を超えた残業や休日労働をさせると、罰則の適用対象となることには注意が必要です。
また、1か月あたり45時間、1年あたり360時間を超えて残業が発生する可能性がある場合は、36協定に特別条項を設けることをおすすめします。

36協定は各事業場で締結する必要があるほか、毎年の更新が必要です。
また、締結して届け出たら、作業場に貼り出すなどして従業員に周知させなければなりません。

36協定については誤解も少なくないため、協定の締結に際しては、社労士のサポートを受けるのがおすすめです。

Authense 社会保険労務士法人では企業側の立場で、36協定の締結や就業規則の作成などをサポートしています。
36協定の締結に関してお困りの際や、手続きの代行をご希望の際などには、Authense 社会保険労務士法人までお気軽にご相談ください。

Authense 社会保険労務士法人は、Authense弁護士法人と同じAuthense Professional Groupの一員です。
万が一労使トラブルに発展した場合であっても、弁護士と連携したスムーズな対応が可能です。

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