Authense社労士法人コラム
公開 2024.06.10

単体1570_新規_【2024】社会保険料とは?概要を社労士がわかりやすく解説

会社は、一定の従業員へ支払う給与などから社会保険料を天引きする必要があるうえ、会社も各従業員が納めるべき社会保険料の一定割合を拠出しなければなりません。

そもそも、社会保険料とはどのようなものなのでしょうか?
また、社会保険料の計算はどのように行えばよいのでしょうか?

今回は、社会保険料の概要や仕組みなどについて、社労士がくわしく解説します。

社会保険料とは

「社会保険料」は、広い意味で使われる場合と、比較的狭い意味で使われる場合があります。
はじめに、広義の社会保険料と狭義の社会保険料の概要についてそれぞれ解説します。

広義の「社会保険料」

広義の「社会保険料」とは、次の5つの社会保険に係る保険料です。

  1. 健康保険
  2. 厚生年金保険
  3. 介護保険
  4. 雇用保険
  5. 労災保険

単に「社会保険料」とだけ言及する場合、この5つをすべて含むことが多いでしょう。

狭義の「社会保険料」

狭義の「社会保険料」とは、先ほど紹介した5つの社会保険のうち、次の3つに係る社会保険料です。

  1. 健康保険
  2. 厚生年金保険
  3. 介護保険

この場合、残った雇用保険と労災保険をまとめて「労働保険」と呼ぶことが一般的です。

社会保険料の計算方法

社会保険料は、どのように計算するのでしょうか?
ここでは、各社会保険料について、計算方法の概要について解説します。
なお、各計算の基礎となる「標準報酬月額」については次で改めて解説します。

近年、社会保険料はソフトを使って算定することが多いでしょう。
ただし、ソフトは改定に対応していないこともあるうえ、設定を誤れば間違った結果が算定されることもあります。
そのため、ソフトを使う場合であっても、計算方法の概念は理解しておかなければなりません。

健康保険料の計算方法

健康保険料は、次の式で算定します。

  • 健康保険料=標準報酬月額×健康保険料率

健康保険料率は、加入している健康保険組合の種類や適用事業所の所在地によって異なります。
たとえば、協会けんぽに加入しており適用事業所が東京都である場合、2024年3月分からの健康保険料率は9.98%です。※1

この式によって算出された健康保険料は、従業員と事業主が折半して負担します。

介護保険料の計算方法

介護保険料は、次の式で算定します。

  • 介護保険料=標準報酬月額×介護保険料率

2024年4月納付分(2024年3月分)からの介護保険料率は、全国一律1.60%です。※1

この式によって算出された介護保険料は、従業員と事業主が折半して負担します。

厚生年金保険料の計算方法

厚生年金保険料は、次の式で算定します。

  • 厚生年金保険料=標準報酬月額×厚生年金保険料率

厚生年金保険料率は、一律18.3%です。
以前は段階的に引き上げられていたものの、2017年9月を最後に引上げが終了し、これ以後は18.3%で固定されています。※1※2

この式によって算出された厚生年金保険料は、従業員と事業主が折半して負担します。

雇用保険料の計算方法

雇用保険料は、次の式で算定します。

  • 雇用保険料=賃金総額×雇用保険料率

雇用保険料は、ここまで紹介した(狭義の)社会保険料とは異なり、「標準報酬月額」ではなくその月に実際に支給する給与(賞与)の総額をベースに計算します。
また、雇用保険料率は毎年改定されるうえ、業種によって異なる料率が適用されます。

たとえば、「一般の事業」である場合、2024年4月からの雇用保険料率は、労働者負担分が1,000分の6、事業主負担分が1,000分の9.5です。※3

社会保険料の計算に用いる「標準報酬月額」とは

健康保険料と介護保険料、厚生年金保険料といった狭義の社会保険料の算定には、「標準報酬月額」が利用されます。
標準報酬月額とは、被保険者が受け取る給与を一定の幅で区分した表にあてはめて決定するものです。

給与の支給総額は残業量などに応じて毎月多少の変動があることが多く、実際に支給額に応じて毎月異なる社会保険料を適用すると、計算が非常に煩雑となります。
そこで、社会保険料の計算を簡便とするため、標準報酬月額が用いられています。

標準報酬月額の計算には、原則として、4月・5月・6月の3か月分の給与支給額が用いられます。
この時期の改定が「定時決定」です。
これにより算定した標準報酬月額が、その年9月分からの社会保険料の算定に用いられます。

標準報酬月額の計算方法

標準報酬月額は、次のステップで算定します。

  1. その被保険者(従業員)の、4月、5月、6月の報酬総額を合計する
  2. 1で算定した合計額を、その期間の総月数(3か月)で割る
  3. 計算結果を「厚生年金保険料額表」の「報酬月額」に当てはめ、該当する「標準報酬月額」を確認する

たとえば、「2」の計算結果が285,000円であれば「270,000円~290,000円」に該当するため、標準報酬月額は「280,000円」となります。
同様に、「2」の計算結果が552,000円である場合は「545,000円~575,000円」に該当し、標準報酬月額は「560,000円」となります。

標準報酬月額の対象となる「報酬」に含まれるもの

標準報酬月額の計算対象となる「報酬」には、次のものが含まれます。

  • 基本給(月給、週給、日給)
  • 能率給、奨励給、役付手当、職階手当
  • 特別勤務手当、勤務地手当、物価手当、
  • 日直手当、宿直手当
  • 家族手当、休職手当
  • 通勤手当
  • 住宅手当、別居手当
  • 早出残業手当
  • 継続支給する見舞金等
  • 年4回以上支給される賞与

原則として、手当の名称などを問わず、年4回以上継続的に支給されるものは、「報酬」に含まれます。
一方、次のものは、原則として標準報酬月額を算定するうえでの「報酬」には含まれません。

  • 大入袋
  • 見舞金
  • 解雇予告手当、退職手当
  • 出張旅費、交際費
  • 慶弔費、傷病手当金、
  • 労災保険の休業補償給付
  • 年3回以下の賞与
  • 制服、作業着(業務に要するもの)
  • 見舞品
  • 食事(本人の負担額が、厚生労働大臣が定める価額により算定した額の3分の2以上の場合)

なお、年3回以下の賞与は社会保険料の対象とならないわけではなく、別途「標準賞与額」の計算対象となり、賞与に係る社会保険料の算定に用いられます。

標準報酬月額の算定基礎届とは

標準報酬月額の算定基礎届(被保険者報酬月額算定基礎届)とは、9月1日からの1年間に適用される標準報酬月額を決めるために、日本年金機構に提出すべき書類です。
毎年6月中旬以降に事業者に対して算定基礎届の様式が送付され、これに7月1日現在で使用している全被保険者の3か月間(4月、5月、6月)の報酬月額を記載します。

記載ができたら、書面または電子による方法で、7月10日まで(10日が土曜または日曜の場合は翌営業日)に提出しなければなりません。
提出先は、事務センターまたは管轄の年金事務所です。

社会保険の加入要件

社会保険の加入義務があるのは、どのような人なのでしょうか?

まず、社会保険の加入義務がある事業所は次のとおりです。

  • 法人:給与を支給している役員や従業員が1人でもいれば、すべて強制適用
  • 個人事業:常に雇用する従業員が5人以上である場合(4名未満の場合は、任意での加入が可能)

適用事業所に雇用される従業員のうち、加入要件を満たす者を雇用形態別に解説します。
なお、要件を満たしていない者は希望によって加入できるものではなく、要件を満たさない者は加入させることができません。

常時雇用されている従業員

常時雇用されている従業員は、その時点で社会保険の加入条件を満たします。
たとえば、正社員などは、原則としてこれに該当します。

役員

常勤役員の場合は、原則として社会保険の加入条件を満たします。
一方で、非常勤役員である場合は、原則として社会保険への加入義務はありません。

また、2社以上で兼務している場合には、「二以上事業所勤務届」を提出したうえで、社会保険料の調整が必要となります。
役員については個別判断が必要な場合もあるため、判断に迷う場合は社会保険労務士(社労士)へご相談ください。

一定のパート・アルバイト従業員

パートやアルバイト従業員は、次のいずれかに該当する者は、社会保険への加入要件を満たします。

  1. 所定労働時間と所定労働日数が、正社員の4分の3以上である者
  2. 「1」以外の者で、次の要件をすべて満たす者
    • 1.週の所定労働時間が20時間以上である
    • 2.月額賃金が8.8万円以上である
    • 3.2か月を超える雇用の見込みがある
    • 4.学生ではない
    • 5.従業員規模が101人以上の事業所に勤めていること

原則として「1」の要件を確認すればよいものの、従業員規模が101人以上の事業所では適用多少が拡大されるため、「2」の要件も確認しなければなりません。

2024年10月から社会保険の加入条件が拡大された

2024年10月から、パート・アルバイト従業員の社会保険の加入条件が拡大されることが決まっています。

先ほど紹介した「2」の要件のうち、現在「従業員規模が101人以上の事業所に勤めていること」の要件が、2024年10月以降は「従業員規模が51人以上の事業所に勤めていること」となります。
そのため、従業員規模が51人以上101人未満である事業所では、2024年10月に向けて適用対象者拡大の準備をしなければなりません。

自社での対応が難しい場合は、できるだけ早期に社労士までご相談ください。

社会保険料に関する注意点

最後に、社会保険料に関する主な注意点を3つ解説します。

算定時は最新の保険料率を確認する

社会保険の料率は、厚生年金保険料のように固定されているものもある一方で、健康保険料や介護保険料、雇用保険料のように適宜改定されるものがあります。
また、加入している健康保険組合などによっても保険料率は異なります。
そのため、社会保険料を算定する際は、事業所に適用される最新の料率をご確認ください。

なお、ソフトを使って計算する場合でも、改定後の料率が自動で適用されないものもあります。
ソフトを使って計算する場合であっても、計算を誤らないよう正しい料率が反映されていることを確認する必要があるでしょう。

社会保険料は賞与からも差し引く必要がある

社会保険料は毎月支給する給与だけではなく、賞与からも差し引かなければなりません。

以前は、賞与は社会保険料の対象から除かれていました。
しかし、給与と賞与とで負担の公平化を図るため、現在は賞与からも社会保険料を差し引くこととなっています。

なお、賞与に係る社会保険料は、標準報酬月額とは別途算定した「標準賞与額」をベースに算定されます。

年の途中で標準報酬月額の改定届が必要となることがある

標準報酬月額の改定は、原則として1年に1回、7月に行います。
ここで算定した標準報酬月額が、その年9月からの1年間の社会保険料算定に活用されます。

ただし、昇給や降給など固定的賃金の変動に伴って被保険者の報酬が大幅に変わった場合には、定時決定の時期を待たずに改定届を提出しなければなりません。
改定届の提出が必要となるのは、次の3つをすべて満たした場合です。

  1. 昇給または降給などにより、固定的賃金に変動があったこと
  2. 変動月からの3か月間に支給された報酬の平均月額に該当する標準報酬月額と、これまでの標準報酬月額との間に、2等級以上の差が生じたこと
  3. 3か月とも、支払基礎日数が原則として17日以上であること

そのため、昇給時期などを定時決定とは異なる時期に設定すると、事務負担が増加する可能性があります。
これを踏まえて、昇給時期などを検討するとよいでしょう。

まとめ

社会保険料の概要や計算方法、計算時の注意点などについて解説しました。

社会保険料は原則として、4月、5月、6月の報酬額を基礎とした「標準報酬月額」をベースに計算します。
計算を誤らないよう、標準報酬月額の考え方や各社会保険料の計算方法などについて正しく理解しておきましょう。

また、2024年10月からはパートやアルバイトの加入範囲が拡大されるため、この点も確認しておくことをおすすめします。

Authense社会保険労務士法人では、社会保険料の計算などの事務手続きのほか、賃金体系の整備など、労務に関する企業様の困りごとを総合的にサポートしています。
社会保険料の計算や労務管理体制の構築などでお困りの際は、Authense社会保険労務士法人までお気軽にご相談ください。

Authense社会保険労務士法人は、Authense法律事務所と同じくAuthense Professional Groupに属しています。
そのため、万が一労使トラブルが生じた際にもスムーズな対応が可能です。

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