企業法務の案件を中心に、エンタメ・ファッション分野まで幅広く手がける高橋 直弁護士。誹謗中傷対策など専門性を高める取り組みを重ねている。徹底したリサーチを信条とし、クライアントに寄り添う姿勢で信頼を獲得。ファッション業界の健全化を目指し、4月にはアパレル企業の最高法務責任者に就任した。
活躍を続ける高橋弁護士に仕事へのこだわりを聞いた。
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1.
友人からの紹介をきっかけに企業法務案件への取り組みを始める
入所されてからどういった分野に注力されてきましたか。
最初は建物明渡訴訟を担当していましたが、支店に異動してからは離婚・相続案件を担当するようになりました。入所して1年ほどしてから企業案件の方が合っていると感じるようになり、徐々に企業法務に移行していきました。
企業法務の方が合うと感じられた理由は何だったのでしょう。
企業案件の方が合理的というか、感情に左右されることが少ないように感じます。離婚・相続は当事者の感情が絡むので、割り切って仕事をするのが難しかったですね。
最初に企業案件を担当されたのはどういったきっかけだったんですか。
友人の紹介で頼まれたのがきっかけです。そこから徐々に案件が増えていきました。
2.
徹底したリサーチで紛争も解決
先生が特に注力されているエンタメ関連の顧問業務や誹謗中傷案件について教えてください。
エンタメ関連の顧問先と誹謗中傷案件はセットのような関係です。
元々は顧問先のYouTuberからの依頼がきっかけで、発信者情報開示請求などを行うようになり、その後VTuber関連の案件が増えていき、著作権侵害等多く担当するようになりました。
個人の方からの誹謗中傷案件のご相談も多いんでしょうか。
個人の方からのご相談も多いですね。プロのYouTuberという訳ではなく、配信活動で一定の収入を得ているような方で誹謗中傷被害に遭われている方も多いです。
対応されている弁護士の方もそんなに多くないからか、お問い合わせもどんどん増えていきました。
解決事例で印象に残っているものはありますか。
ゲーム実況の著作権侵害に関する案件ですね。大手事務所と争って勝訴できました。
どのあたりが印象に残っているのでしょうか。
ミラー配信をされた案件で、判例もほとんどない分野だったので、ひたすら過去の裁判例や文献を調べ、主張を組み立てていきました。相手方も同じように主張してきましたが、最終的には我々の主張が認められました。
徹底的なリサーチについてはこだわられていますか?
クライアントから報酬をいただいている以上、しっかりとリサーチして根拠のある提案をすることを心がけています。
リサーチしてない書面や、あまり手直しせずに出してきている書面は、同業の方がみるとある程度わかりますし、きちんと妥協せずにやっています。
このような考えはAuthenseに入所されて培われたのでしょうか。
入所した当初は、西尾さんと一緒に案件をやっていました。
西尾さんの真面目さや細部にこだわる点がいいなと思いました。自分がイメージしていた仕事観にすごいフィットしたんですよね。
仕事をする上で大切にされていることはありますか?
当たり前なんですけど、さぼらない事ですね。弁護士として経験も積んできているので、それっぽい返答もできちゃうと思うのですが、それはやりたくないですね。
例えば、顧問をしているある会社の場合は自分も法務に近いので、法務責任者が役員に説明する際に不便な返しはしたくないんです。法務責任者の方が自信を持って回答していただけるように根拠をしっかりと示して役員の判断の一助になることは意識していますね。
3.
ファッション業界の健全化に貢献したい
先生がファッション業界に関わるきっかけを教えてください。
正直まだこれからという段階なんです。4月からアパレル企業のCLOに就任したところで、業界の健全化に向けて活動していきたいと考えています。
現在はファッションブランドを運営している会社の顧問をしていて、製造委託先とのトラブルや商標関係、不正競争防止法関係の相談を受けています。
ファッション業界特有の問題というのはありますか。
特有ということでいえばデザインの盗用でしょうか。OEM先を含む取引先とのトラブルも多いと思います。ただ、意外とファッション業界では弁護士に相談する習慣がないんです。
確かにファッションローが注目されるようになったのはここ数年ですね。なぜ今盛り上がりを見せているんでしょう。
2022年には経済産業省に「ファッション未来研究会~ファッションローWG~」が設置され、昨年、ファッションローガイドブックが公表されました。
同WGの設置趣旨・背景で述べられているように、グローバル化の進展、「循環経済」(サーキュラーエコノミー)への世界的進行、情報通信技術・デジタル技術の急速な発展というファッション業界を取り巻く変化に伴い、知的財産、契約交渉、人権問題等のファッション産業に関連する法領域の総称を示すファッションローに係る議論が活発化しつつあります。
高橋先生はファッション業界の健全化に向けてどのような思いをお持ちですか。
まず契約書を交わす以前に、取引前に取引条件を明確にして合意することですね。製造委託先と契約書を交わそうとすると嫌がられるような慣習がいまだに結構あるみたいです。今のご時世他の業界だと少ないかもしれませんね。
一方で、法務全般に関わっている繊維製造企業の場合、大手のアパレルメーカーと取引をする事もあるのですが、しっかりとした契約を交わしています。そういった良い慣習が浸透していけばいいなと思っています。
繊維製造企業の法務全般に関するお仕事をされていますよね。高橋先生のファッションへの興味もそこから出てきたんでしょうか。
そうなんです。服が好きだったこともありますが、繊維製造の現場を見ていて、ファッションの原点に触れたような気がしたんです。ちょうど友人もアパレルブランドを立ち上げていたので、タイミングが合ったというのもありますね。
デザインの盗用問題などはどうでしょうか。
ご相談やトラブルは多いと思います。正直、パクリと言われてもファッションという分野の特性なのか見通しを正確に出すのは難しい場合も多いようには感じます。微妙なラインの判断は本当に難しいです。そのため、しっかり過去の裁判例等リサーチは欠かせません。
これからファッション業界の健全化に向けて、どのように取り組んでいかれますか。
まずはアパレル関係者とのネットワークを広げることですね。私がファッション法務に取り組んでいることを知ってもらい、弁護士に相談するハードルを下げていきたいと思っています。地道な活動になりますが、ファッション業界の健全化に貢献できれば嬉しいです。
4.
専門性を高め、得意分野を極めることで見える景色
法務全般に関わっている企業もある、というお話がありました。具体的にはどのように関与されているのでしょうか。
法務部員の一員のような立ち位置で関わっています。取引先との契約全般、不動産関連、ファイナンスの一部、個人情報保護法関係など本当に幅広く対応していました。
ヨーロッパに子会社があるので、GDPRへの対応も大変でしたね。
非常に興味深い技術を持った会社だと感じました。
実際に彼らが開発した繊維に触れてみると、独特の風合いがあって面白いですよ。着想を得た点も興味深いです。
今後も同社の案件には継続的に関わっていくんでしょうか。
そうですね。今はだいぶ落ち着いてきましたが、これからも法務全般をサポートしていく予定です。契約関係はもちろん、労務問題なども対応範囲ですし、経営層への助言も求められています。まさにジェネラルコーポレートの立ち位置ですね。
最後に、今後のビジョンについて教えてください。
事務所としては、得意分野を伸ばしていきたいですね。エンタメ関連、誹謗中傷関連、ファッション関連、ベンチャー関連の案件など、専門性を高めることで「この分野といえばAuthense」というポジションを確立したいです。
個人的には、好きで得意な分野の仕事が増えればいいなと思っています。実力は大前提として、やはり楽しんで働けることも大事だと感じます。楽しく働ければより実力もつきやすいのではと思います。
Professional Voice
高橋 直
(千葉県弁護士会)早稲田大学法学部卒業。早稲田大学大学院法務研究科修了。企業法務を中心に活動。離婚・相続問題、刑事事件、交通事故被害などの一般民事案件の実績も数多く有し、インターネット上の誹謗中傷問題にも積極的に取り組んでいる。
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