公開 2023.12.09BusinessTopics

新規_単元未満株主の買取請求手続きの流れは?スケジュール例を交えて弁護士がわかりやすく解説

会社法

株主は、単元未満株式について、議決権を行使することができません。
そのため、会社に対して自己の有する単元未満株式を買い取るよう請求することが認められています。

株主から単元未満株の買取請求がされた場合、会社はどのように対応すればよいのでしょうか?
また、単元未満株式の買取請求がなされた場合の対応は、どのようなスケジュールで進めればよいのでしょうか?

今回は、単元未満株式の買取請求がされた場合に必要となる手続きやスケジュール、買取価格の決め方などについて弁護士が詳しく解説します。

目次
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単元未満株の基本

「単元未満株」とは、どのようなものを指し、「端株」とは異なるものなのでしょうか?
はじめに、単元未満株の概要と、これと混同されがちな端株との違いについて解説します。

単元未満株とは

「単元未満株」とは、その株券を発行している会社が定めた「1単元」に満たない株です。

原則として、会社の株主は剰余金の配当を受ける権利や株主総会における議決権などを有します(会社法105条)。
しかし、会社が定款で定めることによって、一定の数の株式を「1単元」とし、その単元単位で議決権を行使できるものとすることが可能です(同188条1項)。

たとえば、ある会社が単元株制度を導入して「100株を1単元」として定めた場合、その会社の株式を300株有している株主は、3個の議決権を行使できます。

一方で、その会社の株を90株しか有していない株主は、議決権を行使することができません。
また、その会社の株式を590株有している株主は5個の議決権を行使することができる一方で、90株部分については議決権がないこととなります。
これらの場合におけるこの90株を「単元未満株」といいます。

なお、会社が1単元とする株式の数は、次のいずれかを超えることはできません(同2項、会社法施行規則34条)。

  1. 1,000株
  2. 発行済株式の総数の200分の1にあたる数

また、上場会社である場合、上場規程の定めにより、1単元の株式数を100株とすることが原則とされています(上場規程427条の2)。

会社が単元株制度を新たに導入するには、定款変更のための株主総会特別決議などさまざまな手続きが必要となります。
今後単元株制度を導入したい場合は、あらかじめ弁護士などの専門家へご相談ください。

端株との違い

単元未満株と混同されがちなものに「端株」があります。
端株とは、1株未満の株を指します。

株式には、株式分割や株式の無償割当てなどさまざまな手続きによって、1株未満の端数が生じることがあります。
たとえば、1株を1.5株とする株式分割がなされた場合、それまで5株を所有していた株主の所有株式数は7.5株となります。
この場合における、0.5株が「端株」です。

議決権を行使することができない点で、端株は単元未満株と共通しています。

単元未満株と端株との最大の違いは、「1株未満であるか、1株以上であるか」です。
たとえば、その会社における1単元が100株である場合において、ある株主が120.5株を有している場合、このうち20.5株が「単元未満株」となります。

そのうち、1株に満たない0.5株部分を、特に「端株」と呼びます。
つまり、1株未満の株式は端株であると同時に、単元未満株にも該当するということです。

単元未満株主の買取請求とは

単元未満株を有している株主は、会社に対してこの単元未満株の買取請求をすることができます。
ここでは、単元未満株主の買取請求の概要を解説します。

単元未満株主の買取請求とは何か

単元未満株主の買取請求とは、株式分割や単元株制度の新規導入などによって単元未満株を有することとなった株主が、自身の有する単元未満株を買い取るよう、発行会社に対して請求することです。
この買取請求がされた場合、会社は単元未満株式の買い取りに応じなければなりません。

ただし、株式の買取価格は株主が自由に決められるわけではなく、会社法による規定や会社との協議によって定めることとなります。
これについては、後ほど詳しく解説します。

単元未満株主の買取請求が認められる理由

単元未満株主に買取請求が認められる最大の理由は、株式は原則として単元単位で売買することとされており、単元未満株は市場での売買が困難であるためです。
また、単元未満株には議決権もないため、この点において株主としての権利を存分に享受することができません。

そのため、株主が正当な対価を受け取りつつ単元未満株を手放す手段の一つとして、会社に対して買取請求ができることとされています。

単元未満株主の買取請求のスケジュール例

単元未満株主から株式の買取請求がされた場合、会社はどのような手続きが必要となるのでしょうか?
ここでは、市場価格がない株式(非上場株式)であることを前提として、単元未満株主から買取請求がされた場合の手続きの流れを、スケジュールの例とともに紹介します。

単元未満株買取請求

なお、具体的な手続きは状況によって異なる可能性があります。
そのため、実際に単元未満株主から買取請求がされた場合は、機関法務に詳しい弁護士へ相談したうえで必要な手続きを洗い出し、スケジュールを設定するとよいでしょう。

株主から単元未満株の買取請求がされる

株式分割や単元株制度の導入など何らかの理由によって単元未満株を有することとなった株主は、会社に対してその単元未満株を買い取るよう請求することが認められています(会社法192条1項)。

この買取請求は、会社に対しての請求に係る単元未満株式の数(種類株式発行会社にあっては、単元未満株式の種類及び種類ごとの数)を明らかにして行わなければなりません(同2項)。

株主は、いったん単元未満株式の買取請求をすると自由に撤回することはできず、撤回するには会社による承諾が必要です(同3項)。

なお、この単元未満株式の買取請求は原則として会社に対して行うべきものである一方で、対象となっている株式が振替株式である場合は、会社ではなく振替機関などに対して買取請求を行うこととなります。

上場会社の株式等に係る株券等をすべて廃止されたことに伴い、株主等の権利の管理を保振機構や証券会社などに開設された口座において電子的に行う制度を「株式等振替制度」といい、この制度の対象となっている株式が「振替株式」です。
上場会社の場合、原則としてこの振替制度を活用しているため、買取請求は原則として保振機構などに対してなされることとなります。

単元未満株式の価格を決定する

会社に対して単元未満株主から買取請求がなされたら、その単元未満株式をいくらで買い取るのかを決定します。
株主に買取請求をする権利があるとはいえ、会社が株主側の言い値で買い取る義務まではないためです。

単元未満株の買取価格は、その株式が市場価格がある株式(上場株式など)であるか場合と市場価格がない株式であるかによって異なっており、それぞれ次のとおりです。

市場価格がある株式の場合

買取請求の対象となっている株式が市場価格のある株式(上場株式など)である場合、その「単元未満株式の市場価格として法務省令で定める方法により算定される額」がその株式の価格となります(同193条1項1号)。
この法務省令で定める方法とは、次のうちいずれか高い額です(会社法施行規則36条)。

  1. 単元未満株式の買取請求がされた日(請求日)におけるその株式の終値(請求日が取引市場の休業日である場合は、その翌営業日の始値)
  2. 請求日においてその株式が公開買付け等の対象であるときは、請求日における当該公開買付け等に係る契約におけるその株式の価格

「2」は例外的なケースであるため、原則として「請求日の終値」になると理解しておくとよいでしょう。

市場価格がない株式の場合

買取請求の対象となっている株式が市場価格のない株式(一般的な非上場株式)である場合、買取請求をした株主と会社との協議によって定める額がその株式の買取価格となります。(会社法193条1項2号)。

ただし、両者間の協議によって買取価格が決まらない場合は、単元未満株式の買取請求をした株主または発行会社は、買取請求日から20日以内に、裁判所に対して価格決定の申立てをすることが可能です(同2項)。
この申立てがなされた場合、裁判所は請求の時における株式会社の資産状態やその他一切の事情を考慮したうえで、株式の買取価格を決定します(同3項)。

一方で、協議によって価格が決まらないにもかかわらず、請求をした株主と会社がいずれも買取請求から20日以内に価格決定の申立てをしない場合は、その会社の1株あたり純資産額に買取請求の対象となっている単元未満株式の数を乗じて得た額が、その単元未満株式の買取価格となります(同5項)。

そのため、実際に単元未満株式の買取請求がされた場合は会社がまずこの額を算定し、これをベースとして買取請求をした株主とで協議を行うことが多いでしょう。
そのうえで、この価格では合意ができないと考える側が裁判所に価格決定を申し立てることとなります。

効力発生時期が到来する

単元未満株式の買取請求は、代金の支払時にその効力を生ずることとされています(同193条6項)。

なお、株券を不発行としている会社が多くなっていますが、会社が株券発行会社である場合は、株券と引換えにその請求に係る株式の代金を支払います(同7項)。
会社が株券を発行しているかどうかは法務局で会社の登記事項証明書(登記簿謄本)を取得することで確認でき、その会社の登記事項証明書に「株券を発行する」旨の記載がある場合は株券発行会社です(会社法911条3項10号)。

一方、現在(平成18年5月1日の旧商法の改正日以後)は株券不発行が原則とされているため、株券を不発行としている会社の登記事項証明書には株券発行に関する記載はありません。

株主名簿に記載する

株主名簿とは、株主情報の管理と株主権利の保護を目的として、株主の氏名(または名称)と住所、その株主が有する株式の数や株式の取得日などを記録する名簿です(同121条)。
株主名簿は会社がその本店に備え置き、原則として株主や債権者からの閲覧や謄写の請求に応じなければなりません(同125条)。

会社が自社の株式を取得した場合は、その旨を株主名簿に記載すべきこととされています(同132条1項2号)。
そのため、単元未満株主からの買取請求に基づいて株式を取得した場合は、すみやかに株主名簿に記載しましょう。

まとめ

単元未満株を有している株主からその株式を発行している会社に対し、単元未満株式の買取請求がなされた場合の手続きの概要とスケジュールの例について解説しました。

単元未満株とは、会社が定めた1単元に満たない数の株式です。
たとえば、100株を1単元としている場合における、100株未満の株式がこれに該当します。

1単元に満たない株式には議決権はなく、また原則として市場で売買することもできません。
そのため、会社法の規定により、単元未満株式を有する株主から会社に対する買取請求が認められています。

単元未満株主から発行会社に対して株式の買取請求がされたら、まずはその単元未満株式の買取価格を決めなければなりません。
上場株式であれば請求日における市場価格の終値などから自動的に買取価格が決まる一方で、非上場株式など市場価格のない株式では、買取請求をしている株主と会社との協議によって買取価格を決める必要があります。

両者間の協議によって買取価格が決まらない場合は20日以内に裁判所に価格決定を申し立てるか、会社の純資産額から機械的に価格を算定することとなります。
そのため、取引価格のない株式を発行している会社が株主から単元未満株式の買取請求をなされたら、まずは買取価格について会社の方針を固めることが必要です。

単元未満株式の買取請求に対する対価の支払い時期などについて明確な定めはありませんが、裁判所への価格決定申立て期限が20日以内であることを考慮すると、できるだけ速やかに対応するべきであるといえます。
単元未満株主による買取請求に対して適切に対応するために、買取請求がなされたら、早期に弁護士などの専門家へ相談のうえ、対応方法やスケジュールを検討するとよいでしょう。

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